スラスラ読める人は本の「どこ」を見ているか?
流し読みポイントを見極める3つの目印
印南敦史(いんなみ・あつし)
書評家、フリーランスライター、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役
1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。
「1ページ5分」の超・遅読家だったにもかかわらず、ビジネスパーソンに人気のウェブ媒体「ライフハッカー[日本版]」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。
その後、ほかのウェブ媒体「NewsWeek日本版」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などでも書評欄を担当することになり、年間700冊以上という驚異的な読書量を誇る。
著書に『
プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)のほか、音楽関連の著書が多数。
よく、「誰の人生でも1冊の本になる」といわれますが、生きていればたしかにいろいろなことがあるものです。そして、そのいくつかは一生ものの分岐点になったりもします。僕にとっては、9歳のときの出来事がまさにそれでした。
小学4年生になりたての春、坂の途中で自転車のブレーキがいきなり効かなくなり、そのままバランスを崩して頭を地面に打ちつける事故をしました。
その後、意識が戻らない状態が3週間以上続き、医師も「99%、命の保証はできません」といっていたのだそうです。
もちろん、いまこうして文章を書いている以上、そのあと僕はちゃんと目を覚ましたわけですが……この事故は子ども心ながら本当にショックでした。
それ以来、「自分の頭は壊れてしまったのだ」という思いが離れませんでした。僕にとってなによりも辛かったことの1つが「読んだり書いたりすることができなくなってしまった」という思いです。
もうずいぶん前に亡くなりましたが、僕の父は編集者でした。帰宅はたいてい深夜で、泥酔して帰ってきては大声で下手な歌を歌ったりしていたので、近所の人はたまったものではなかっただろうと思います。
とはいえ、子どもにとって父は父。憧れの気持ちはあったし、将来は同じような仕事をしたいと漠然と感じてもいました。なによりも僕は、本が大好きな少年だったのです。
ただ、怪我をきっかけとして、「自分は本をつくる仕事になんて就けない」と思うようになりました。1学期をまるまる休んだので成績は急降下しましたし、「読むことも書くことも全部ダメになってしまった」と思っていたからです。
……と、これ以上書くと、ただの不幸自慢みたいになってしまいますが、いまだからこそいえるのは、「自分は壊れてしまった」とか「読み書きの能力が低下した」といった思いは、すべて僕が勝手につくり上げた思い込みだったということです。
こんな話を書いたのは「私は遅読家だ」という認識も、その人の思い込みから生まれた幻想だと僕が信じているからです。
そうした苦手意識って、多くの場合、ほんの些細な失敗体験やトラウマからなどから生まれているものです。年間700冊以上のペースで本を読み、月50本以上のペースでブックレビュー記事を書いている自分の経験からもはっきりいえますが、意外と簡単に「本が読める自分」と出会えるチャンスはあるのです。
「やっぱり本がある生活のほうが、ない生活よりはずっと楽しい」 ― これは僕にとって動かしがたい事実です。
そして、みなさんの人生にとっても、本が「ある」生活のほうがいいのだとすれば、僕が『遅読家のための読書術』で紹介している読書スタイルはきっとお役に立てるはずです。そう信じているからこそ、この本を書こうと思い立ちました。
「カメ」の装丁が目印です。本屋さんでお見かけの際は、ぜひ手に取ってみてください。
【印南敦史氏 最新刊】
『遅読家のための読書術
― 情報洪水でも疲れない
「フロー・リーディング」の習慣』
積ん読、解消!月20冊があたり前になる。
なぜ「1ページ5分」かかった遅読家が、「年間700冊超」を読破する人気書評家になれたのか?
元・遅読の書評家が教える!
本を読むのがラクになる方法
第1章 なぜ読むのが遅いのか?
──フロー・リーディングの考え方
第2章 なぜ読む時間がないのか?
──月20冊の読書習慣をつくる方法
第3章 なぜ読んでも忘れるのか?
──読書体験をストックする極意
第4章 流し読みにもルールがある
──要点を逃さない「サーチ読書法」
第5章 本とどう出会い、どう別れるか?
──700冊の選書・管理術
終章 多読家になって見えてきたこと
おわりに 10年後には「7000冊の世界」が待っている
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