高級物件の代名詞といえる都心のタワーマンション。大手不動産とゼネコンが手掛けたからといって安心できない、との“教訓”は今なお健在だ。税務当局が節税スキームの規制強化を図る中、人気の東京湾岸エリアで施工ミスが発覚。自ら逆風に輪をかけるかのような事態となっている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)
「タワーマンション銀座」と化した東京都心の湾岸エリアで、ある異変が起こっている。不動産業界の両巨頭、三菱地所と三井不動産の、共にスーパーゼネコンが建設する超目玉物件で、購入者を不安に陥れる事態が相次いで発生しているのだ。
中央区晴海の運河沿い、オフィスビル「トリトンスクエア」の程近く。南西から北東方向の順に2018年までに、三つのタワマンが立ち並ぶ予定だ(下図参照)。
そのうち、「ザ・パークハウス晴海タワーズ」の2棟目となるティアロレジデンスの契約者に、1月15日付である通知が届いた。送り主は三菱地所レジデンスと鹿島で、そこに書かれていたのは、「エレベーター昇降路ピット内の躯体是正工事について」──。
その内容は、非常用エレベーターを設置する地下1階のスペースで、免震装置のコンクリート部分の角が張り出した状態で見つかり、この部分を切り取る「是正工事」を行ったというものだ。
三菱地所広報部と鹿島広報室によれば、昨年11月にエレベーターの設置工事をしようとした業者が、異常を発見。三菱地所の子会社、三菱地所設計が作った設計図ではこの部分を取り除くとしていたが、その表記の仕方が分かりにくく、工事を請け負った鹿島が設計図を基に作った「施工図」では取り除かれないで、そのまま施工してしまった。両社間の確認不足が原因だという。
設計と施工レベルの高さから、業界では「最高の組み合わせ」とされる三菱地所レジと鹿島だが、何たるミスか。契約者にしてみれば、両社が手掛けた東京・南青山の高級マンションで施工不良が13年に発覚し、丸ごと建て替えた上、多額の補償金を支払った一件が想起されたのも無理はない。
しかも関係者によると、住民説明会は開催されず、問い合わせに対して個別に説明するのみ。「第三者機関であるERIソリューションから構造上の妥当性について問題ないものとの見解を得た上で、是正工事を行っております」と、通知の文書には記載されている。