真実は現場にしかない

 応接室に通されてお茶を飲んだところで、「どうしたら業績が上がるか」はわからない。会社をよくする情報は「現場」にしかありません

 株式会社低温(低温商品の物流/奈良県)の川村信幸社長は、かつて、現場を知らない「アナグマ(穴熊)社長」でした。
アナグマ社長とは、会社ばかりにいて、外に出ない社長のことです。

 この会社は、冷凍チルド食品の配送、青果物、水産物の配送などが主な仕事です。

 「約50」ある配送ルート(奈良県中心)を社員と外注を使って網羅していたのですが、私は、あることに気がつきました。

 それは、
外注先が受け持っているルートと、低温の社員が回っているルートを入れ替えたほうがいいのではないか」ということです。

 低温の社員は「距離の長いルート」を受け持っていたため、残業が増えていました。
 そこで、外注費用と社員に支払う残業代を比較してみたところ、「残業代のほうが高い」ことがわかった。

 仕事の効率を考えて発注した「外注」が、じつは「害虫」になって、お金を食い散らかしていたのです。

 私は、「かばん持ち」をしていた川村社長に「ルートの入れ替え」を提案しました。ルートを入れ替えた結果、どうなったと思いますか?

 毎月「250万円」の純利益が出たのです。
 私は常に現実・現場の目線で考え、経営判断を下すように心がけています。自分自身が見聞きしたこと、体験したことによってのみ考える、と言ってもいい。

 なぜなら、「真実は現場にしかない」からです。

<著者プロフィール>
小山 昇
(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して株式会社ベリーを経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、600社以上の会員企業を指導しているほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回以上の講演・セミナーを開催。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。
2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。
『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』『強い会社の教科書』(以上、ダイヤモンド社)、『99%の社長が知らない銀行とお金の話』『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(以上、あさ出版)、『【増補改訂版】仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】
http://www.m-keiei.jp/