間接部門がお役所化しているかどうかは
入退社手続きを見ればわかる

 このIT部門・総務部門バトル、ご紹介したS社の事例は極端だと思われる方もいるかもしれないが、対立激化の度合いはさておき、大なり小なり、多くの会社で見聞きするパターンなのではないだろうか。

 この問題は、指示した社長から見れば、あるいは、ユーザーである社員からみれば、「IT機器だろうが電話だろうが、ベンダーがどこだろうがどうでもよい。ビジネスを遅滞させないために、早く決めて導入してくれ」ということではないか。つまり、この騒動が問題なのは、iPadやiPhoneがIT機器か電話かというツールの特質や、これらを提供するベンダーはどこかという議論に終始し、肝心のユーザー視点で議論されていないことにある。

 どちらが管轄するか、取り合いをするならばまだ救いがある。しかし、実際に起きたのは正反対の押し付け合いである。ユーザー視点に立ったマインドが、IT部門にも総務部門にもないことが深刻な問題であり、トンデモな事態を生んでいるのだ。

 営業部門が顧客の利益を第一に考えるように、こうした間接部門も顧客、すなわち社内ユーザーの利益を第一に考える視点がなければならない。間接部門にユーザー視点があるかどうかは、その会社の入社手続き、退社手続きを見れば一目瞭然だ。入社手続き、退社手続きがワンストップになっているか、数ヵ所の部門で手続きしなければならないかの違いだ。

 私自身が在籍した企業でも、また、コンサルタントやトレーナーとしてサポートした企業でも、ほとんどの企業が、入社手続きや退社手続きが未だにワンストップになっておらず、社員をたらい回しにしている。社員証は人事、電話は総務、PCはIT部門、さらに誓約書は人事、健康保険証は健康保険組合、といった具合だ。

 最悪なのは、社員からみれば、同じ銀行口座の登録に関する手続きなのだが、給与口座の連絡は人事へ、経費清算口座の連絡は経理へ、コーポレートクレジットカードの手続きは総務へと3部門で手続きしなければならないパターンだ。給与口座と経費清算口座の連絡票はせめて一体化できないか。そして、社外手続きとはいえ、コーポレートクレジットカード手続きと経費清算口座手続きは、せめて窓口を一本化できないか。多くのユーザー社員が思っているに違いない。

 入社手続き一覧や退社手続き一覧を人事部が作成している会社は多い。しかし、この手続き一覧も曲者だ。人事がユーザー社員と担当部門の間に入り、各担当部門からヒアリングしたり、記載してもらって作成しているので、残念ながら理解不足や概略記載のために手続きがわかりにくかったり、担当部門が意図したことが記載されていなかったり、最新の情報に更新されていなかったりするケースがよくある。

 結局、ユーザー社員は担当部門と直接やりとりする必要が生じ、間に人事部が入った分だけ、処理に時間を要したり手間がかかったりする。人事部の担当者は良かれと思って作成しているのだが、ユーザーの満足度を下げてしまっているのだ。