日銀の思いとは逆に振れた
マイナス金利の効果
1月29日、日銀は付利を▲0.10%に引き下げた。日銀のマイナス金利導入当初、日本の株価は大幅に上昇し、為替も大幅に円安に振れた。その後、1ヵ月近くが経過し、一転して大幅な株安、円高に振れ、アベノミクスへの不安、さらにはマイナス金利政策そのものの是非の議論も生じている。
こうした転換の最大の要因としては、米国への見通しの大きな変化がある。世界で牽引車不在のなか、マイナス金利政策は通貨戦争のスパイラル化、投資先不在、信用活動の断絶不安が生じやすい、という危険性を持つ。
本稿では、昨年までは相応に効果のあったマイナス金利政策が、今日では危険を帯びていることを議論する。黒田総裁としても米国の予想以上の変調は想定外だったことだろう。
金利水没の中の「浮き輪」米国に懸念
「LED戦略」の暗黙の前提が崩れた
下記の図表は、これまでも何度か用いた「世界の金利の『水没』マップ」で、国別・年限別の国債利回り、イールドカーブ状況を示す。
筆者は昨年来、同図表を用いながら、マイナス金利、「水没」のなかで資産運用を行うには、「LED戦略」とする、「(1)長く(Long)、(2)外に(External)、(3)多様な(Diversify)なリスク」の3分野しか選択肢はないとした。同時に、今日の金融機関の戦略も以上のLED戦略に集約されるとした。
ただし、こうした運用戦略の暗黙裡の前提は、運用難民を受け入れる確固たる基盤、米国の存在だった。米国経済への信認から同国は水没せず「浮き輪」の存在であった。世界の運用者が「運用難民」として「浮き輪」に向かい米ドル上昇圧力になった。しかし、年初来、米国の減速不安から「浮き輪」が下がりだし、「浮き輪」不在の「世界水没」不安が生じて市場を揺るがした。LED戦略が効かない信用破壊のクライシスだ。
◆図表:世界の金利の「水没」マップ(2016年2月23日)
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