第21回から、社会で価値を生むための7つのメタ能力について説明している。対人スキル、リーダーシップ、チームワークについて語ってきたが、それらのベースともなるのがオートノミー、自律であり、自立である。
自分では「ジリツ」しているつもりでも
実は誰かの枠にはめられている
人間、自立するためにはまず何が必要だろうか。“自覚”ではなかろうか。自分の役目は何か。何をすべきか。どうなりたいのか。そうしたことを自覚することからすべてが始まる。
リーダーシップについて語ってきたが、リーダーが人を巻き込む際には、共感させ、納得させて、さらに自分事化させることが大切だと述べた。仕事の大義を理解させ、かつ、自分の人生やキャリアにおいての意味をメンバーに自覚させることによって、仕事を“我が事化”させるのだ。その自覚をもって、今度はメンバーそれぞれがリーダーシップを発揮するようになる。
ここで大切なことは、仕事でも人生でも、“自分で選び取る”ということだ。キャリアを他人の手に委ねてはいけない。
人から支配される生き方を選ぶのではなく、自ら自分の生きる生き方を選んでいくことがスタート地点だ。その状態をオートノミーと呼ぶ。まさに、「自立せよ」ということだ。
ここでよく言われる二つのジリツ、自立と自律に関して私見を述べたいと思う。「自立」は、「経済的自立」のように、他人の力を借りなくても自分で生きていける、といった意味合いが強い。他との関係はここでは希薄で、孤高の生き方さえ感じるかもしれない。
一方、「自律」には他人に律されなくても自分で律することができる、他に迷惑をかけずにやっていける、といった優等生的な意味合いが感じられる。
だが、本当のところはどうであろうか?
結論から言うと、私は「自立が目的」で「自律はその手段」のように感じている。さらに、「自律」を叱られなくても自分でちゃんとできる聞き分けの良い優等生のような状態とは捉えていない。むしろ、自分の心の赴くままに行動しても、それが誰にも迷惑をかけないような究極の状態を目指したいと思っている。