セル・バイ両サイドアナリスト業務に豊富な経験を持つ北川哲雄氏は、欧米の上場企業のガバナンス事情にも通じ、伊藤レポート「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトにも参加した。コーポレート・ガバナンス・コードの公表から約1年。日本のコーポレート・ガバナンスの今後の展開について、北川氏に聞いた。

企業は真正面から説明責任を果たすことが必要

――昨年3月のコーポレート・ガバナンス・コード公表から、1年が過ぎました。

北川哲雄(きたがわてつお)
青山学院大学 国際マネジメント研究科 教授。1975年、早稲田大学商学部卒。中央大学大学院博士課程修了。経済学博士。野村総合研究所、モルガン信託銀行(現JPモルガン・アセット・マネジメント)等で、主任研究員、シニアアナリストなどを経て現職。

北川(以下略):昨年6月に適用が開始され、3月決算の会社の場合、昨年末までにコーポレート・ガバナンス報告書の提出が求められたので、上場企業の報告書はほぼ出そろいました。今はこれを受けて、専門家による報告書の分析が進められています。

 今次のコーポレートガバナンスコードは、世界的に見ても先進的な内容が盛り込まれています。私もいくつかの報告書に目を通しましたが、企業の対応は、よく考えて真摯に応えようとしている会社と、揚げ足をとられないように保守的かつ抽象的表現に終始している会社の対応は大きく分かれた、という印象を持っています。

――コーポレート・ガバナンス報告書は、資本市場において、どのような意味を持つのでしょうか。

 コーポレート・ガバナンス・コードは、大きく5つの基本原則と、さらにそれらを補足する補充原則が定められていて、73のチェックポイントがあるとされています。独立社外取締役の人数などに触れた形式的な議論も多くありますが、会社の価値を上げていくための中期経営計画の策定、CEOの後継についての考え方を示すサクセッションプランなど、定性的な情報の開示も求められています。

 企業の考え方、開示内容は様々ですが、市場に対して、各社のガバナンスに関する考え方が発信されたことで、投資家と企業の間の対話が促されることが期待されます。

 これを受けて、機関投資家はそれらの内容を精読し対話を行うことが要請されています。。企業側には真摯な質問には説明責任が厳しく求められます。ボイラープレート(決まり文句)の説明は批判を受けることになります。