日本では現在、膨大な数の人たちが、何らかの疾病や様々な理由で社会からはじき出されてしまって、支援を受けることもできずに引きこもらざるを得なくなり、クリニックにだけ通っているという。
クリニックにだけ通う“引きこもり”
「外来ニート」とは?
職場で働くサラリーマンや主婦などの診療を行っている東京都八王子市の「ひらかわクリニック」院長で、日本精神神経科診療所協会の「明日のクリニックを考える研究会」研究班長も務める平川博之医師は、厚労省からの研究事業費を受け、地域で生活しながらも社会参加出来ていない人たちを調査した。そして、膨大に存在するこれらの人たちを調査・研究する上でのラベルの必要性から「外来ニート」と呼んで、注目している。
ちなみに、「外来ニート」という言葉は、造語だ。対象は「65歳未満である」ことを前提に、最近6か月以上にわたって「就労・就学をしていない」「休職・休学中ではない」「主な家事を担当していない」「デイケア、デイナイトケア、作業所などに通所していない」といった項目すべてを満たす状態の人。従来の「ニート」とはまったく違う「新たな定義」だと強調する。
「働いたら、負けかな…」といった怠け者のような負のイメージが広がった従来の「ニート」と、たまたま同じ表現を使ったため、「誤解や批判を招きやすい」と、研究班の専門家の間でも議論があったようだ。
従来の「ニート」は、ハローワークなどに通わないことが「働く意欲のない若者」のように曲解され、テレビメディアなどが「繁華街にたむろする若者」をイメージ映像に流したりするなど、そもそも日本では定義付け自体が間違っていた。しかし、働きたいのに、対人関係の不安や視線恐怖の緊張感などから、なかなか動くことのできない、膨大な数の「無業者」が存在しているのも、また事実である。
「最近は、ネットを検索して、自分が“強迫性障害”とか“パニック障害”とか“うつ”ではないか?などと、事前にチェックしてくる外来患者さんが増えましたね。薬についても、情報をご存知で、ものすごく勉強されている。ただ、頭でっかちになってしまって、誤解を解くのに時間がかかってしまうこともあります」(平川院長)