DIAMOND CFO FORUM

グローバル・キャッシュ・マネジメント3.0
グローバル経営最適化の絶対条件【後篇】

山岡正房・EYアドバイザリー ディレクター
堀 雄介・EYアドバイザリー マネージャー

ERP投資への偏重を見直す

 GCMの高度化において、いま一度検討すべき課題がIT投資である。国内のERP(業務統合パッケージ)市場が1000億円を超えている一方で、キャッシュ・マネジメント関連の投資額は極めて小規模である。また、ERP導入に伴う業務標準化やシェアード化、決算早期化などは全社的プロジェクトと位置づけられている一方で、キャッシュ・マネジメントは財務部門だけの問題ととらえられがちである。

 会計分野でERPが扱うのは主に財務会計に関するものである。近年は、ERPが統合したデータを分析、活用するBI(ビジネス・インテリジェンス)を融合させて管理会計もカバーするようになっているものの、過去の数字を扱うという点では同じであり、ERPやBIへの投資を増やしただけで将来を見通せるようになるわけではない。

 むろん、ERPやBIへの投資を控えるべきだと言いたいわけではなく、グローバルでの競争力維持のためには引き続き適正な投資を行っていく必要がある。しかしながら過去の実績の処理や分析と同様に、GCMによる将来予測もCFO組織にとって重要な仕事である。にもかかわらず、ERPやBIへの投資ばかりが目立つ現状は、アンバランスと言わざるをえない。

 GCMのシステム導入が進まなかった理由の一つは、コスト面でのハードルが高かったことと考えられる。国内のみを対象とするシステムは、早くから主要邦銀が提供していたが、海外を取り込んだグローバル・システムについては以前は独自に構築するしかなく、多額の費用を必要としていた。そのため現在でも、エクセルを使って財務管理を行っている一部上場企業も少なくない。数字の集計とシートの取りまとめに忙殺される現場の負担は極めて大きなものであり、このような状況の中で、戦略立案やその実行支援といった付加価値の高い仕事に時間を割くことは困難であった。

 しかしながら、現在ではグローバル展開を想定したクラウド型のサービスを提供するベンダーが登場し、導入と運用にかかるコストが大幅に軽減されている。また、これに対抗して主要邦銀もグローバル対応を急速に進めており、高度なGCMシステムを導入するうえでの、現実的な選択肢が揃うようになってきた。

 こうした状況変化の下で、コスト高を理由にGCMの発展的活用を先延ばしすることは、もはやできないはずである。

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「トップ・マネジメントの教科書」CEOとCFO その新しい関係

グローバル経済の本格化によって、歴戦のビジネスパーソンの経験と勘は裏切られる可能性が高まった。トップマネジメントは、リスクを洗い出し、測定し、定量化し、それを踏まえて経営戦略を説明できなければいけない。その際、CEOはCFOの力を借りずしては考えられない。CFOには経営陣の中で論理的な判断のよりどころとなり、CEOを補完すると同時に、戦略志向やビジネスリテラシーも求められている。新しい時代のCEOとCFOの関係はどうあるべきかを求め、取材した。

「「トップ・マネジメントの教科書」CEOとCFO その新しい関係」

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