函館に運び込まれた北海道新幹線。開業前から評判はそれほどよくないが、本当に期待できないのだろうか

 いよいよ3月26日に北海道新幹線が開業する。東京と新函館が4時間2分でつながるというこの新幹線、少し評判が悪い。「料金が高い」「新函館の駅が函館から遠い」。そして実際に開業後9日間の予約乗車率が25%と低いことから「赤字になる」といった具合で、まるで無用の長物になりそうな意見すら聞こえてくる。

 開業後の評判がよく実際に経済効果が高い北陸新幹線と比べてみると、開業前の報道からはかなりの温度差が感じられる。まあ実際に開業しても、東京からたくさんの観光客がやってきた金沢のような意味での活況は見込めないはずだ。

 とはいっても「だから北海道新幹線はダメだ」という見方は少し間違っている。

 私は『戦略思考トレーニング』という経済の頭の体操の本を書いているのだが、この「北海道新幹線問題」は実はいい頭の体操の題材だ。これから一緒に頭の体操をしていくと最後には「けっこう北海道新幹線はビジネスとしてはいいかもしれない」という話につながっていく。この不思議な話に少しだけおつきあいいただきたい。

北海道新幹線の最大の利用者を
「東京からの旅客」と思い込んでいないか

 北海道新幹線はダメだという人の代表的な意見は「東京から函館が2万2690円だったら、飛行機の方がはるかに安くて早い」という意見だ。もちろん航空運賃の定価と比べれば新幹線は安いが、全日空で羽田から函館まで飛ぶ場合、3日前までの得割で1万7990円、55日前までの旅割55なら日時を選べば1万1890円ほどで函館まで飛べる。

 しかも新幹線の新函館駅はとなりの北斗市にあって、新函館から函館までは「はこだてライナー」の乗り継ぎを含めて20分以上追加で時間がかかる。だから開業直後の物珍しさがなくなれば、新幹線を利用して函館に来る人などいなくなるだろうという意見である。