3月18日、室町正志・東芝社長は「キヤノンからの素晴らしい提案」と発言。入金ありきの買収スキームには批判が集まっている Photo:REUTERS/アフロ

 3月17日にキヤノンへの売却が決まった東芝の医療子会社・東芝メディカルシステムズ。売却金額は6655億円。価格がつり上がった熾烈な買収合戦の裏で何があったのか。本誌の調べで、東芝が驚くべき要求を行っていたことが分かった。

 事態が動いたのは2月末。日を追うごとに財務悪化に歯止めがかからない東芝が、入札参加者に出したリクエストは以下の通り。

(1)買収金額の2割を3月24日までに支払うこと。いかなる理由があっても東芝は返済しなくてよい。

(2)残り8割の金額は3月末までに支払う。仮にクロージング(事業譲渡)ができない結果になっても、うち350億円について東芝は返済しなくてよい。

 この要求に対して、「(コニカミノルタと組んだ)英ペルミラや(三井物産と組んだ)米KKRら投資ファンドは、グローバルスタンダードから逸脱している」(関係者)と憤りをあらわにして、実質的には戦線離脱。この時点で、キヤノンと富士フイルムホールディングスの一騎打ちとなった。

 両社共に、破格の条件引き上げを行った。最終的には負けてしまったが、「富士は医療子会社の買収と引き換えに、東芝本体への増資引き受けまで提案していた」(入札参加者)という。

 多数の企業が群がり、「最初は、誰しもが欲しがる案件だった」(電機メーカー幹部)はずのディールが、次第に東芝本体の救済色を強めていった。東芝が何よりも優先したのは、医療子会社の行く末ではなく、3月末までにカネを手にするというデッドラインだった。