初日、2日目は「おあずけ」
巧みに心理を操り買い物に導く

 日本の悪徳商法でも、消費者心理を操って買い物をさせる手法が蔓延しているが、爆買いツアーの中でも似たようなところがある。たとえば、私の友人は北京から成田にやって来たが、初日は成田泊。翌日は都内に移動したが、五反田駅から徒歩20分以上もかかるようなホテルに連れて行かれ、「買い物もままならない」と嘆いていた。

じょ・こうとう
北京外国語大学院卒業、北京外国語大学講師を経て日本に留学し、博士号を取得。日本労働研究機構(現・独立法人労働政策研究・研修機構)、中央大学講師などを経て2007年に中国市場戦略研究所(cm-rc.com)を設立。『「爆買い」中国人に売る方法』『中国人に売る時代』(ともに日経新聞出版社)「中国人にネットで売る」(東洋経済新報社)、「中国人観光客を呼び込む必勝術」(日刊工業新聞社)など著書多数。セミナーや企業内研修なども多数手がけている。

 パスポートはガイドが一括管理をする。「失くしたりしないため」という理由もあるだろうが、自由に行動をさせないように縛る意味合いも大きいだろう。

 ツアー側からすれば、自由に行動などされては困る。あくまでも、キックバック契約をしている店舗で買ってもらいたいのだ。

 さらに最初の数日間、買い物から遠ざけることで、お客たちは「買い物に飢えている」状態になる。そこで3日目にして、ようやく銀座へ連れて行くのだ。ある女性弁護士は「こうした状態で買い物をすると、周りの人の雰囲気にも飲まれて、夫が止めるのも聞かずに無駄な買い物をしてしまった」とこぼしていた。

 中国でも、格安ツアーの「内幕」は知られているのに、なぜツアー客が後を絶たないのか。もちろん「安さ」も魅力だが、やはり「日本語がしゃべれないし、日本に関する情報をあまり持っていないから、ツアーの方が安心できる」という理由が大きいだろう。

 ビザも大きく関係している。大陸中国人が日本に行くためにはビザ取得が必須だ。収入や不動産証明書などの提出が求められ、煩雑な手続きをしなければならない。地元に日本領事館がなければ、さらに苦労は大きくなる。最近では、ネット上でビザの代行取得をうたう業者も現れたほどだ。しかし、ツアーに参加すれば、旅行会社がすべて代行してくれる。

 こうしてようやく日本に来ても、彼らの望んでいる「日本人の使っている商品」ではなく、高額の値札を付けて売られている、日本人なら見たこともないようなサプリや化粧品を買う羽目になることもよくあるのだから、ツアー客たちは気の毒だと思うこともしばしばである。