4月1日、家庭向け電力市場が完全自由化され、電力業界は大競争時代に突入した。その主戦場は、東京電力の牙城である首都圏。電力各社はこの最も肥沃な市場への攻勢を強めている。過熱する電力首都決戦の真打ちが中部電力。同社の勝野哲社長に勝算を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

※本インタビューは2016年4月5日公開「中部電力、首都決戦で超野心的な勝算の中身」の拡大版です。

――電力会社はこれまで、担当する地域で独占的に電力の供給ができましたが、自由化された今、新規参入者や他の地域で事業を行ってきた電力会社と競争しなければなりません。これまでとは大きく事業環境が変わります。どのように捉えていますか。

かつの・さとる/1954年6月生まれ。愛知県出身。77年中部電力入社。工務部、岡崎支店長、東京支社長を経て2010年取締役専務執行役員経営戦略本部長。13年副社長執行役員。15年6月より現職。 Photo by Hiroki Kondo/REAL

 競争ですから、勝ちにこだわっていきたい。これはもう、ずいぶん前から社員に言っていることです。勝つために、先手を打って挑戦していきます。

 すべてのお客様が電力会社を自由に選べるようになりました。一方、電力を供給する私たちは、中部エリアだけではなく国内の他の地域へ事業エリアを広げていくことができます。さらに、2017年4月にはガスの自由化もあります。

 電力会社はエネルギーだけじゃなく、生活や産業へ事業を通してさまざまな付加価値を生み出していかなければなりません。そこがこれまでとは大きく違うところです。

――中部電力の新しい電気料金メニューには、「ビジエネ」と称して、中小企業向けに会計や集客を支援するサービスがあり、コンサルティングを実施するというコンセプトを打ち出しています。

 電力市場は大口の市場、つまり電気を大量にお使いになる法人向けの市場が2000年から自由化されました。そのときから、私たちはできるだけ地元の企業を回って、お客様がどういうことを望んでいるか伺ってきました。そのご要望に応えられるように、価格やサービス、省エネのための工夫をご提案してきました。

 4月からの家庭向けの電力市場でも、同じようにお客様のニーズを伺って、ご提案していく。会計や集客についてのアイデアが出てきたのは、お客様のところへ飛び込んで、どんなところに課題を感じているのかを聞くことができたんだと思います。

 今まで政府に提出して認可をいただいていた供給約款、さまざまな規定通りに電気を供給すればよいということから、頭を切り替えていかないといけません。

当たり前のように投資回収
できる時代ではない

――事業エリアを拡大するということについては、東京電力の牙城である首都圏でのシェア獲得へ、料金メニューを発表し、中小のガス会社とも提携を進めています。中部エリア以外で、今後狙っていく市場はどこになるのでしょうか。