4月1日、家庭向け電力市場が完全自由化され、電力業界は大競争時代に突入した。その主戦場は、東京電力の牙城である首都圏。電力各社はこの最も肥沃な市場への攻勢を強めている。過熱する電力首都決戦の真打ちが中部電力。同社の勝野哲社長に勝算を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

かつの・さとる/1954年6月生まれ。愛知県出身。77年中部電力入社。工務部、岡崎支店長、東京支社長を経て2010年取締役専務執行役員経営戦略本部長。13年副社長執行役員。15年6月より現職。 Photo by Hiroki Kondo/REAL

「競争ですから、勝ちにこだわっていきたい。これはもう、ずいぶん前から社員に言っていることです。勝つために、先手を打って挑戦していきます」

 電力会社はこれまで、担当する地域で独占的に電力の供給ができたが、完全自由化された今、新規参入企業や他の地域で事業を行ってきた電力会社と競争しなければならない。

 熾烈な大競争時代の幕開けは見方を変えれば、新規参入企業と同じく各地域の電力会社にとっても大きなチャンスとなる。人と企業が集中している巨大市場、首都圏へと攻め込むことができるようになったからだ。

 首都圏は東京電力の牙城。各社はそこへ一斉に攻め込んでいる。中部地域を地盤とする中部電力もその中の一社だ。勝野哲・中部電力社長執行役員が、首都決戦へ決意を語る。

「やっぱり首都圏ですよ。規模も成長性も圧倒的に首都圏。最も市場の価値が高いということです。ただ、電力会社として忘れてはならないのは安定供給です。その上で、競争に勝ち抜いていく」

「中部電力は4月から発電、送配電、販売の三つの事業会社によるカンパニー制を導入しました。これからは各カンパニーが、市場のニーズに向き合って事業をやっていかないといけない」

「発電なら発電効率を高め、安定的に安く電気を供給する。地球環境に配慮するという大事な要素もあります。送配電はすでに電線が敷設されているエリアで滞りなく、電圧のブレが起きないように送電する。販売は単に電気やガスを販売するだけではなく、サービスの開発をしていく。発電も送配電も販売も市場のニーズに合うようにがんばらないと、価格と品質がこれまで以上に問われる競争市場ではお客さまに選んでもらえません。

 お客さまからの電気料金で当たり前のように投資回収ができる時代ではないと認識しないといけないということです」