第21回から、社会で価値を生むための7つのメタ能力について説明している。いよいよ、最後の一つが「人としての力」。根源的なテーマであるが、昨今のビジネス事情に鑑みると、ますます重要なテーマになっているように思える。
「誠実ではない人」と思われる
ビジネスマナー違反とは?
社会人材学舎では、「人としての力」の要素として、以下の12の項目を例示している。誠実さ、主体性、慎重さ、ビジネスマナー、忍耐強さ、好奇心、几帳面さ、おもいやり、利他性、自己分析(能力)、公平さ、私利私欲(のなさ)。
「私利私欲がない」というのはマイナスがないという意味で、より積極性のある「利他性」とは区別している。
また、一見すると表層的に見える要素と、より根源的に思える要素が混在しているようにも見えるかもしれない。表層的に見える要素としては、たとえば「ビジネスマナー」が挙げられる。しかし、表層的に見えるものでも、実は深い意味が内包されているというのはよくあることだ。
そもそもビジネスマナーの本質とはなんだろうか。
私は講演会や研修の仕事がとても多いので、スケジュール調整は困難を極める。各依頼主の要望にできるだけ合わせるように、日程を調整していかなければいけない。
しかし、この調整はあくまでもこちらの都合であって、お客様には関係がない。それぞれのお客様は当然自分のスケジュールを優先したいに決まっている。他の顧客の要望や私の予定などは眼中にない。それで当然だろう。
なかには「お金を払う以上、野田は業者なのだから泣かせて当然。こちらには無理難題を言う権利がある」と思っている担当者もいる。私にとってのビジネスマナーに照らせば、こうした考え方は“マナー違反”である。ビジネスマナーは、相互信頼と相互尊重の理念のもと、商取引における共存共栄の関係を円滑に図るためにあると思っているからだ。
こんなケースがあった。ある企業の終日研修1回のために、「できるだけ多くの日程候補を出してほしい」と要求された。私は5日間の日程を出した。当然スケジュール上はその5日間をブロックし、ほかの予定を入れないようにした。
ところが、その後、そのまま1ヵ月間も放置されたのだ。当然、何度も決定を促す催促をした。他のお客様からその日程にオファーが来ていることを正直に伝えもしたが、その度に「内部事情で決まらない。全日程もう少し押さえ続けてほしい」と言われた。
私の感覚だと、これはビジネスマナー違反だ。相手方に対する配慮が足りなすぎると感じる。先に示した項目に照らすならば、「私利私欲が大きすぎ、おもいやりが足りない」ということだ。どのような社内事情があるか知らないが、もし本人の怠慢があったとするなら「誠実さ」にも欠ける。
つまり、ビジネスマナー違反の裏にある、より根源的な考え方の問題を認識するべきなのである。