もし日本列島にもっと早く寒気が訪れていたら「牛すき鍋膳」需要は高まったかもしれないが… Photo:DOL

 吉野家ホールディングスは4月11日、2016年2月期の連結営業利益が前期比54%の減益になったという決算発表を行った。減益の原因は、暖冬の影響で「牛すき鍋膳」の販売数が減少したことと、米国産牛肉など食材費の価格上昇が影響したことだという。

 マクロの経済要因を見ていると、このふたつが減益要因だというのは基本的には間違った分析ではない。確かに12月、1月と暖冬が続き、ユニクロでもヒートテックやフリースの売上が伸び悩んだのも事実だ。

 吉野家の店舗の状況を見ても12月、1月の既存店売上高は前年同期でマイナスだが、冬らしい寒さが戻ってきた2月には売上高は前年同期でプラスに転じている。もう少し早く寒気が日本列島を訪れていたら「牛すき鍋膳」需要ももっと早く立ち上がったかもしれない。

 それ以上に打撃なのは牛肉価格の高騰だろう。今、スーパーの肉売り場に行くとよくわかるのだが、安いオーストラリア産牛肉と高いアメリカ産牛肉の価格差がかなり大きく広がっている。もちろんその上にブランド和牛がより高価な食材として販売されているのだが、和牛は牛丼店の経営とは基本的には関係がない。

 吉野家にとっての問題は米ドル高のおかげで米国産牛肉がとても高い食材となってしまったことと、他店の中に安いオーストラリア牛を使う競合がいることだ。

 吉野家の場合、他の牛丼店と違いあの独特の味を大切にするために、米国産牛肉のショートプレートという部位のバラ肉しか牛丼には使わない。そのこだわりがあるために、米国産牛肉の価格が高騰すると、それが即、吉野家にとっては原価高騰の原因となってしまう。

 ということで仕入れ値が上昇し、同時に期待の冬の主力商品が伸び悩んだ結果、営業利益が半減したという説明はそれなりに外部の株主や識者にとっては理解できる説明ではある。しかし、どうやらそれだけではないと私は見ている。

 ちなみに私がどういう立場かというと、本業は経済の専門家だが、個人としては20年来の吉野家の100株株主。これは優待券目的なのだが、年間にもらえる優待券20枚分だけでなく、それ以上に吉野家に行く回数が多い。吉野家ファンなので、週1~2回は吉野家で食事を続けている。

 なのでマクロの経済分析家の視点とは少し違う、ミクロの消費者としての視点でも吉野家を語ることができるというのが私の特徴だ。その視点で見ると、もう少し違う吉野家の課題と戦略が見えてくる。今回はその話もしておきたいと思う。