デフレの勝ち組と言われた牛丼各社やマクドナルド、ワタミといった、低価格外食チェーンが苦しむなか、新たな勝ち組として浮上してきたファミリーレストラン。業界変化の理由はどこにあるのか?
値上げで客足が遠のいた
吉野家は営業利益6割減
米国産牛肉の高騰と円安のダブルパンチで、昨年から今年春にかけて相次いで値上げを発表した、すき家、吉野家、松屋の牛丼大手3チェーン。デフレ下では並盛280円という激安価格で一世を風靡したが、今では3チェーンとも300円台となった。
今年春、トヨタ自動車を筆頭に多くの大手企業で過去最高のベースアップが実現し、夏のボーナスも多くの業種で増えた。昨年の消費増税の影響もあり、実質賃金はまだ増加に転じてはいない。ただ、減少幅は確実に縮小している。
そんな微妙な状況のなかでの値上げの結果は、果たしてどうだったのか。牛丼3社の中でいち早く2015年度第1四半期決算(3月~5月)を発表した吉野家ホールディングスは、前年同期比で売上高3.4%増、営業利益58.9%減。主力の吉野家に限ってみれば、売上高も1.8%減で、値上げによる客数減少が浮き彫りとなった。
客足が減少しているのは、すき家や松屋も同じ。さらに他業態にも目を転じれば、同じくデフレの勝ち組と呼ばれたマクドナルドやワタミといったチェーンも苦戦している。マクドナルドは期限切れ鶏肉使用問題や異物混入問題を起こしたし、ワタミはブラック企業問題で、それぞれ消費者の信頼を損なったのは事実だ。ただ、それだけが低迷の理由ではなく、「徐々に賃金水準が回復してきたことで、単に安いものを追求するのではなく、ある程度、価格が高くてもおいしいものを食べたい、という消費者ニーズが広がってきています」(繁村京一郎・野村證券シニアアナリスト)。
日本フードサービス協会のデータを見ても、売上高が前年同月比を割り続けているのが、デフレ下で勝ち組だったファストフードとパブレストラン/居酒屋の2業態だ。一方、前年同月比を上回る推移を見せているのは、ファミリーレストランや喫茶など。
「何はさておき、安いから昼は牛丼」という選び方をする時代は終わりを迎え、外食産業は各業態がお客を奪い合う大競争時代になってきたのだ。