昨年の松屋、吉野家に続いて4月15日、すき家も牛丼並盛りを値上げ。大手3社とも、300円台となった。原因となっているのは、原材料である牛肉価格の高騰と、国内の人件費高騰。この先、再び牛丼が安く味わえる日は来るのだろうか?
米国産牛肉に干ばつ危機
中国の需要増がタイトな需給に拍車をかけた
昨年4月から始まった、牛丼の値上げ。松屋は昨年、2度の値上げで280円から380円(プレミアム牛めしのみ)にまで引き上げた。吉野家も4月と12月の2回に分けて280円から380円に値上げ。最後まで291円と、200円台で踏ん張っていたすき家も4月15日、350円に引き上げ、大手チェーン3社とも300円台時代が訪れた。
値上げの最大の理由は、原材料である牛肉価格の高騰だ。牛肉市況に詳しい、マーケット・リスク・アドバイザリーの津賀田真紀子アナリストは「米国産牛肉価格の高騰と一昨年から急激に進んだ円安が要因です」と解説する。
日本に入ってくる牛肉は、ほとんどが豪州産か米国産。ただし、この2国の牛肉は育て方が違うため、味に違いがある。豪州産は「グラスフェッド」(牧草が主なエサ)で、米国産は「グレインフェッド」(穀物が主なエサ)だ。エサの違いから、豪州産は赤身が多く堅め、米国産は脂分が多いために柔らかいという特徴がある。
こうした特徴から、牛丼に多く利用されているのは、米国産だ。吉野家はかつて、BSE(牛海綿状脳症)騒動が起きたとき「米国産でないと納得のいく味を出せない」として2年半、牛丼販売を休止したほどだ。すき家と松屋は、吉野家と違って豪州産と米国産の両方を使用しているが、やはり牛丼業界全体で見ると、米国産の占める割合が高い。
その米国産牛肉の需給は非常にタイトな状況が続いている。主要産地で何年も干ばつが続いているため、全米の牛の頭数は2007年頃と比べて1割近くも減った。今年もエルニーニョ現象が起こると予想されており、干ばつが収まる兆しはない。
一方、この間に需要は急増した。中国人の所得が増え、好んで食べる火鍋の具材に牛肉が大量に消費されるようになったのだ。火鍋に使われるのは、いわゆるバラ肉で、これは牛丼と同じ部位だ。中国は表向きには、BSEを理由に米国産牛肉の禁輸措置を続けているが、実際には香港などを経由して大量の米国産牛肉が中国人の胃袋に収まっている。