こうした予想は当り、テレビ番組、映画、音楽、ゲーム、電話など、これまで独自の媒体と専用のハードウェアを通じて消費されていたコンテンツが、インターネット・プロトコルにより共通のフォーマットに落とされ、iPad一枚ですべて楽しめる時代が訪れた。

 また、IBM自身の戦略に関しては、業界の常識からすると「逆張り」をする。当時、「IBM分割論」が世の中では常識となっており、多様な製品分野ごとに会社を分割すべきと主張する人が多かった。各分野に専業特化したシリコンバレーの企業と戦うためには、IBMも身軽になる必要があるということだ。ところが、ガースナーはこの「業界の常識」に対して、最初から懐疑的だった。それではここでまた、エクササイズに取り組んでもらおう。

【エクササイズ】
Q:ガースナーはなぜ業界の常識に反して、IBMを分割すべきでないと考えたのでしょうか?
(ヒント)ガースナーの経歴の中に手がかりがあります。

顧客がIBMに求めるのは
いったい何か?

 さて、あなたはどのように考えただろうか。ガースナーはこう考えた。専業メーカーがもう1社増えることを、本当に顧客が求めているのだろうか、と。顧客が求めているのは、複雑化していく情報技術を整理し、ソリューションやサービスとして提供してくれる企業ではないだろうか。そのためには、多様な分野のエンジニアが必要になる。IBMは、そうした顧客が必要とするものをすでに持っている。その強みを分割してしまって、本当にIBMは再生できるのだろうか。

 ガースナーはアメリカン・エキスプレスというITのヘビーユーザーに身を置いていた。顧客の側からIBMを見たことのあるガースナーには、顧客の内面を感じ取ることができたのだ。

 こうした考え方に基づき、ガースナーは業界の常識に反して、IBMを総合IT企業として存続させることを決断する。ただ、その際にガースナーが考えたのが、IBMが抱える多様な事業・資産のうち、この先どこで価値が高まるかであった。それを予見できれば、総合型のビジネスモデルの価値をさらに高めながら、競争優位性を発揮することが可能になる。