大胆な事業構造の改革を進め、成長軌道に乗ったはずのパナソニックが、連結売上高10兆円という2018年度の目標を、早々に撤回した。巨大組織のかじ取りを任され約4年がたった今、今後向かうべき方向性をどう見定めているのか。津賀一宏社長に聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

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──パナソニックとして、3度目の挑戦だった連結売上高10兆円の目標を撤回しました。背景、要因をどのように分析していますか。

 われわれはすでに、売り上げを伸ばすために安売りをしたり、価格競争を仕掛けたりということは、基本的にやらない体質に変わっています。その意味では、利益を重視しながらどこまで売り上げが伸ばせるか、どれだけ短期間のうちにM&Aなどで成果が出せるのかを、これまで見てきたわけです。

 ただ、中国の市況悪化、国内住宅市場の回復が想定よりも遅いといった理由から、2015年度は8兆円の計画に対し、4500億円の売り上げ未達になりました。16年度は8.4兆円というターゲットを設定していましたから、となると1年間で1兆円近い売り上げを積む必要があります。これは誰の目から見ても無理ということで、10兆円の旗は下ろさざるを得ないということです。

──売り上げを追わないという今回の打ち出しは、社長に就任した12年のときに、後戻りしているようにも見えますが。

 利益を追わずに売りを追ったら売りが上がらなかったという、単純な話ですよ。追っても上がらなかった売りをまた追うのかというと、やはり利益を追おうと。後戻りというか、元に戻ったといえばそうかもしれないですね。

──歯がゆさはありませんか。

 もともと(実態が)見えにくい会社の「見える化」を進めるというのが、社長就任以来やってきたことですから。今回のことでさらに見えるようになりました。要は売りをきっちり追おうよと言っても、この程度の売りしか上がらないんだなということが見えたと。これは負け惜しみではなく、やらないと見えないことです。

──目標撤回に至る内部要因については、どう認識していますか。

 15年度は37ある事業部のうち、過半の事業部が売り上げ目標に未達、もしくは大きく未達でした。ということは事業部がマーケットの変化を十分に見えていない。これがやはり原因でしょう。もしくは甘い想定で事業計画を作っていたということです。

──各事業部の甘い見通しを、経営陣・財務部門も見抜けなかったということになりませんか。