Photo by Kazutoshi Sumitomo

──7月1日、証券会社の業界団体である日本証券業協会の会長に就任した。業界の課題は何か。

 私自身、大和証券勤務時代にリテール(個人向け業務)営業と、ホールセール(法人向け業務)営業をそれぞれ10年以上経験し、特にリテールにおける顧客の信頼を得られていないという問題意識をずっと持っていた。

 ホールセールは、1990年代前半、いわゆる証券不祥事が発覚して以降、努力の甲斐もあって、ずいぶん企業の信頼を回復してきたと感じている。ところがリテールの場合は、個人顧客からの信頼回復の速度が遅いと言わざるをえない。それが顕著に表れているのが、証券会社の預かり資産残高だ。

 個人の金融資産残高は約1400兆円。そのうち証券会社は、全体でわずか13%の180兆円程度しか預かっていないのが現状だ。直近10年のピーク時、2007年には20%だったから、株価の下落を考慮したとしても、利用者は減っている。

 証券各社の収益全体に占める株式売買委託手数料は、もはや20%にも満たない。収益を上げるためには、預かり資産を増やし、そこから上がる手数料を伸ばしていくしか生き残る道はない。だからこそ、まずは信頼回復が重要だと考えているわけだ。