2014年10月、消費増税の経済への悪影響が顕在化してきた。2014年4-6月期のGDP速報値が前期比(年率換算)マイナス6.8%と大きく落ち込んだ。これに対して、10月31日、日本銀行の黒田東彦総裁は、マネタリーベース(通貨供給)を毎年80兆円に増やすなどの追加緩和を発表した。「黒田バズーカ2」と呼ばれたこの政策は、サプライズとしてはまずまずの戦果を上げたように見えた。だが、それでも11月17日に発表された2014年7―9月期のGDPの一次速報は、年率換算でマイナス1.6パーセントと、予想より悪かった。安倍首相は2015年10月に予定の消費税率の引き上げを先送りした。そして、その是非を問うために衆議院の解散・総選挙に踏み切った(第94回)。

 衆院選で大勝した安倍首相だったが、次は2016年7月の参院選に向けて、経済政策で支持率を回復させることを狙うために「一億総活躍社会」を打ち出した。しかし、各省庁は早くも「一億総活躍」の予算獲得に向けて動き始めた。そして、予算を狙った族議員やさまざまな業界が予算獲得を目指して跋扈する状況になった(第117回)。

 要するに、安倍首相は財政健全化の公約よりも、景気腰折れを防ぐための対策と選挙対策としての財政出動・金融緩和を続けてきた。結果として、財政健全化の達成は遠のいてしまっている。

安倍首相の関心は消費増税延期と
選挙前のバラマキへの「国際的なお墨付き」だけ

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」は、金融緩和の断行は英国と同じだが、財政政策と構造改革については、英国の真逆の政策である。景気対策・選挙対策としてのバラマキが続き、構造改革は先送りされてきた。これを換言すれば、「政策をバランスよく進める」とは、日英で意味が真逆であることを示している。

 おそらく伊勢志摩サミットでは、首脳会議の共同宣言に「政策をバランスよく進める」という、いかようにも解釈できる表現が盛り込まれることになるのだろう。しかし、首脳会議では財政政策について意見の一致はないまま、「バランス」は欧州と日本では、真逆の解釈がなされるのだろう。

 ただ、安倍首相は別にそれでいいのだろう。首相は、世界経済がどうなるかなんて実はなんの関心もないのだ。消費増税延期の空気を醸成するためにノーベル経済学賞受賞者の「お墨付き」を得ようとした首相にとって重要なことは、7月の参院選を前にして、消費増税の延期と、選挙対策としてバラマキを行うことに、「国際的なお墨付き」を得ることしかないのだから。