10、業績が上がってしまった

 見識、力量、どう見ても大したことはないのだが、担当した部署の業績がことごとく上がっていくという運のいい人がいる。前任者が仕込んでおいたビジネスの種がタイミングよく開くというケースもある。

 能力主義の会社では、業績が上がっているのに出世させないと「なぜ昇進させないのか」という明確な説明が必要だ。となると、どんなに「運がいいだけ」とまわりから思われていても、ほとんどの場合は出世できる。実は、好況のときはラインに出て、不況のときはスタッフにいるのが出世の黄金法則なのだが、それを知ったうえで異動希望を出している人と、たまたまそうなった人がいる。ここで言う運の良い人のほとんどは後者である。

 さて、「なぜか出世している人」が偉くなったカラクリはだいたいこんなものである。

 今回ご紹介した多くのケースのように「ラッキーな人」もいれば、能力もあるし、業績も上げてきたのに、実力者に嫌われて出世コースから外されてしまう人もいる(それでも本当に実力があればカムバックして社長になる人もいる)。派閥争いに巻き込まれて、面倒くさくなって会社を辞め、大学の研究者になったり、壺を焼いたりする人もいる。

 人事は人のやることなので、必ずしも合理的にはいかないし、何が合理的なのかも結局のところはよくわからない。そんなことで、サラリーマン人生で有終の美を飾るためには、結局は「実力よりも運」というのが、約30年いろいろな組織を見てきた私の偽らざる感想である。

(構成/大高志帆)

※なお、本記事は守秘義務の観点から事案の内容や設定の一部を改変させていただいているところがあります。