低価格メガネが隆盛を誇っている今、業界でも凄まじい快進撃を続けている企業がある。それが、「JINS」を展開するジェイアイエヌだ。同社の2010年8月期の売上高は、前年比150%超で推移しており、今年度の売上本数は業界2位の150万本を達成する見込みである。驚異の売上を支えるのが、「レンズ追加料金ゼロで1万円以下」という驚くべき価格設定だ。しかし、この業績は順調に築かれてきたものではない。実は、同社は昨年秋まで業績の悪化に苦しみ、08年と09年は最終赤字に陥っていた。ではなぜ、ここまで大きく復活することができたのだろうか。強さの秘訣と今後の展望を田中仁社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子、撮影/宇佐見利明)

韓国「3000円メガネ」をきっかけに参入
しかし、08年には最終赤字へ

2期連続最終赤字からV字回復!<br />メガネの革命児「JINS」社長が明かす<br />経営改革の舞台裏と価格破壊の真意ジェイアイエヌ田中仁社長

――もともと服飾雑貨の製造・卸を行っていた御社が、メガネ業界に参入したきっかけを教えていただきたい。

 2000年に服飾雑貨の市場視察で韓国を訪れた際、日本人観光客向けにメガネを3000円で販売し、しかも15分で作れるという店に出合った。一緒に同行した知人は、そのメガネを購入し、非常に喜んでいた。そんな彼の様子を見ながら、「物価の違いがあるとはいえ、日本で3万円はするメガネが韓国で3000円というのは、どういうことか」と疑問に思い、日本のメガネ市場を調査し始めた。そして、「我々にも参入できそうだ」と結論づけた後、1年間の準備期間を経て、01年4月、福岡に1号店をオープンした。

――異業種からの参入だが、オープン後は順調だったか。

 オープンしたばかりの頃は、集客は手配りのチラシ程度だったが、店にはお客様が溢れるほどになった。ただ、半年も経たないうちに、大手上場企業、個人業態を含めた格安メガネ店が同じ天神地区に20店ほど“雨後の筍”のように出店。売上も次第に減少し始めた。さらに同じ頃、マイカルの破綻によって、同社への売掛金が2000万円ほども貸し倒れるという不運も重なってしまった。

 しかし、よく周りを見ると、他店も同じような価格設定をしているものの、商品や店舗そのものにはあまり魅力がないように感じた。我々が目指しているファッション性の高い商品を提案できれば他店に勝てるのではないかと感じ、厳しい状況下、逆にアクセルを踏むことにした。