少々唐突で恐縮ですが、まずはこの数字をご覧ください。あなたはどんなふうに思われますか?
「夫婦が離婚する場合、全体の16%は夫(父親)が子どもの親権を持ち、17%は元妻との間で養育費の約束を交わしており4%は今でも養育費を受け取っていて、養育費の平均は毎月3万円」(平成10年および平成23年度、厚生労働省・全国母子世帯等調査結果報告より)
あまりにも相談の現場と乖離しているのではないか……私は首をかしげざるを得ませんでした。なぜなら、正直なところ、毎月3万円の養育費を元妻から受け取っている父子家庭はほとんどお目にかからないからです。
これらの統計の数字はしょせんトゲも毒もない平均値に過ぎません。平均というのは当事者1人1人の積み重ねだからこそ、数字の裏に隠された個別具体的な事情も知っておいた方が理解はぐっと深まるはず。そこで今回は離婚後の父子家庭の生の声を紹介しましょう。本当に平均で3万円の養育費をもらっているのでしょうか?また離婚するまでの間、どのような工夫をしたら養育費を確保できるのでしょうか?
子ども3人を置いて家出した妻
養育費・慰謝料は不倫相手と直談判に
「嫁に養育費を払わせることはできないものでしょうか?どうしても養育費が無理なら慰謝料でも……なんとかお力をいただきたいです」
そんなふうに必死の形相で私のところへ相談しに来たのは坂本陽太郎さん(熊谷市在住。38歳)。夫婦が離婚し、夫が子どもを引き取り、妻から養育費をもらうというケースは圧倒的に少数ですが、陽太郎さんもその1人です。陽太郎さんは自分の手元で子どもを育てていくのだから正々堂々、妻へ養育費の話をすれば良さそうですが、「あんたより私の所得が低いから養育費は支払わずに済むでしょ!」「子どもはいらないし、会わせてくれないのも仕方ないから!」と妻は暴言の数々を吐き散らかしたようです。
陽太郎さんは我が耳を疑わざるを得なかったようですが、過去の経緯を振り返ると、妻の言葉と態度はむしろ一致しており、さもありなんという感じです。
「僕が『もう離婚するしかない』とあきらめたのは、何回注意しても嫁が不倫をやめようとしなかったからです。最初、嫁はすべてを認めたので、僕は嫁に誓約書を書かせたのですが、結局、男とは別れていなかったのです」
陽太郎さんが「男と続いていたんじゃないか?」と妻を問い詰めると、妻は意味不明な奇声をあげ、何のためらいもなく家を出て行ったそうです。自分のお腹を痛めて産んだ子ども3人を置いたままで。