2008年にNTTドコモの3Gネットワークとの“相互接続”を実現した通信ベンチャーの日本通信。旧態依然とした通信業界に、世界規模で変化し続けるコンピュータ業界の価値観を持ち込んで、ひっかき回してきた。地味な存在ながら、iPhone4用のSIMカードを販売することで、俄然、注目を集めている。創業者の三田聖二社長に話を聞いた。
(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

――この8月6日の決算発表会で、国内ではソフトバンクモバイルの回線を契約することが必須のiPhone4用の「マイクロSIMカード」を発売すると明かした。これで、国外から持ち込んだiPhone4に、日本通信が発売するマイクロSIMを差せば、ソフトバンクよりもネットワークの品質がよいNTTドコモの回線でiPhone4を使えるようになる。

iPhone4をドコモ回線で利用可能に!<br />話題のベンチャー、日本通信の<br />三田聖二社長を独占インタビュー<br />「無線中心の次世代インターネットは<br />ここ日本から起こしたい」人前に出て話をするのは苦手だが、人と話をすることは好きだという。「最初、ワイフとは5年経ったらリタイヤするという約束で、日本通信を立ち上げた。だが、あれから、もう15年も経ってしまった」と笑う。
三田 聖二 Seiji Sanda
日本通信社長。1949年、石川県生まれ。父親の転勤により8歳で米国に渡り、40歳を前に帰国するまで、大半を同地で過ごす。73年、カナダ国鉄に入社。78年、米デトロイト大学電気工学科工学博士課程修了。その後は、米コンレイル鉄道と米ロングアイランド鉄道の幹部を経て、84年以降は米シティバンク、米メリルリンチ証券、米モトローラ、米アップルコンピュータの経営幹部を歴任する。96年に通信ベンチャーの日本通信を起業。2005年には大証ヘラクレス市場に上場。3年前から、パイロットの長男を教官にして軽飛行機の操縦を習い始めた。日本のラーメンが好物。3男2女の父。
Photo by Shingo Miyaji

 まだ、中身を詰めているので詳しく話せないが、日本通信は、8月23日にiPhone4用のマイクロSIMのプロダクトとサービスの概要を正式発表する予定で準備を進めている。

 現在、弊社のホームページ上でSIMカードの優先リザーブ(事前登録)を受け付けている。その数は、ボクたちの想定よりもケタが2つも多かった。実感としては「日本通信の新しいプロダクトで、こんなに多いはずがない」という感じだ(笑)。

 というのも、当初は、海外で買ってきたSIMロックフリーのiPadを国内に持ち込んだ人たちが、品質のよいドコモの回線でiPadの世界を楽しむために使いたいのかと考えていた。

 だが、登録してくれた人たちにメールで聞いてみると、“音声”に対する要望が圧倒的に多かった。となると、データ通信のみのiPadではなく、電話としても使えるiPhoneということになる。

――つまり、国内には、それだけ多くの人たちが、ソフトバンクによるiPhoneのSIMロックを外して、別の通信キャリアが発行するSIMカードを使いたいというニーズが存在しているということか?

 正直、よくわからない。

 ただ、「8月中に出します」と言っただけで、そのニュースは一気に世界中に広まった。そして、国内外のインターネットのサイトやツイッター上では、どのようなサービス内容になりそうかという話題で盛り上がっている。

 iPhoneは、米アップルが、世界の市場で同一仕様のプロダクトを販売する前提で開発した正真正銘の“グローバル端末”だ。それが国内では、ソフトバンクのSIMロックがかかっている。だが本来は、そういうものではない。

 そう言えば、7月26日には、米国著作権局の管理下にある米国議会図書館が、デジタルミレニアム著作権法の適用除外条項の見直しを行って、iPhoneなどの端末のSIMロック解除は「合法である」という判断を発表した。これまでは、グレーと扱われてきた部分がフェアユース(公正使用)の範囲と認められたことは大きい。