熊本地震から1ヵ月が経過し、義援金・仮設住宅などの支援が本格化してきた。義援金を受け取り、生活再建に役立てることは、生活保護世帯にも可能なのだろうか?

熊本地震の被災者支援は
生活保護世帯も同様に受けられるのか?

全国から集められる義援金、生活保護世帯は受け取れないとの噂もあるが、実際はどうなのか?

 2016年4月16日、熊本地震の本震が発生してから、1ヵ月以上が経過した。避難所生活を送る人々の人数は、4月17日には約18万4000人であったが、5月18日には9907人となり、初めて1万人を下回ったという(読売新聞記事:熊本の避難所の人数、初めて1万人下回る(2016年5月18日))。罹災証明の発行、仮設住宅の建設、義援金の配布など、生活再建に向けた支援も開始され、進行しつつある。

 今回と次回は、被災した生活保護世帯・被災によって生活保護を利用することになった世帯に対する被災者支援について、厚労省方針・実際の運用・必要な手続き・新たに発生する問題を検討してみたい。

 なお厚生労働省は、発災から約10日後の2016年4月27日、社会・援護局保護課保護係長事務連絡「平成28年熊本地震による被災者の生活保護の取扱いについて」を発行している。内容は、2011年3月から5月にかけ、東日本大震災に際して発行された厚生労働省社会・援護局保護課長通知3件に「準じて」、今回の熊本震災に関連する生活保護行政を取り扱うというものだ。ただし、一般市民が一読して誤解なく理解できる内容ではない。既に運用・報道などに混乱も見られているようだ。

 このため生活保護問題対策全国会議は、「Q&A 震災と生活保護【2016年 熊本地震版】」を作成し、2016年5月18日に公開している。

 今回は、震災被災者向け支援と生活保護の関係のうち、特に義援金について、弁護士の小久保哲郎氏(参照:https://diamond.jp/articles/-/28031)・倉持恵氏(参照:https://diamond.jp/articles/-/79717)、生活保護ケースワーカー業務に携わる一方で生活困窮者支援ボランティアを続けてきた觜本郁(はしもと・かおる)氏(NPO法人神戸の冬を支える会)に、制度と運用の両面からお話を伺った。

「生活保護なら義援金は受け取れない」「生活保護で義援金を受け取るには、条件があったり、受け取れる金額の上限があったりする」という世間の噂は、どこまで事実なのだろうか?