消費増税の2年半見送り
筆者にとっては当然である

 安倍首相が2017年4月からの消費増税を2年半見送ることを表明した。経済政策として消費増税の延期は筆者にとっては当然である。その理由は、3月24日付け本コラム「増税スキップ・景気対策・追加緩和で日本経済は盤石になる」をご覧いただきたい。

 その中で、2014年4月からの消費増税(5→8%)の失敗の悪影響が継続していることに加え、中国などの海外要因のリスクを書いている。その上で、2017年4月からの消費増税(8→10%)について、消費増税を行う場合と行わない場合、2020年度の名目GDPと基礎的財政収支を試算している。

 それによれば、消費増税を行う場合、名目GDPは570兆円程度、基礎的財政収支対GDPは▲11%程度、消費増税を行わない場合、名目GDPは600兆円程度、基礎的財政収支対GDPは0%程度となる。以上の試算から、消費増税を行わない場合のほうが国民経済にとって望ましいという結論だ。

 安倍首相がどのような考察を行ったのか知るよしもないが、消費増税の見送りの結論は筆者も賛成である。

 なお、筆者が消費増税の見送りだけでなく、財政支出も主張するのは、以下の理由である。

 雇用は金融緩和によって良いパフォーマンスだ。4月の有効求人倍率は1.34倍と24年5ヵ月ぶりの高水準だし、失業率も3.2%まで下がっている。ただし、もっと雇用がよくなる余地もある(5月19日付けコラム「日銀の「失業率の下限」に対する見方は正しいか」)。

 GDP低迷は放置しておくと、そのうち雇用まで悪くなる。低迷の原因を考慮すれば、理論的には、消費減税(8→5%)をするのが経済政策の筋である。ただし、消費税は社会保障目的税とされているので、実際に減税するとなると、社会保障関係予算の組み替え等が必要で実務的・政治的に困難である。

 そこで、消費増税を見送った上で、消費減税と実質的に同じ経済効果となるような財政支出増を行うのが現実的である。筆者試算では、消費増税スキップと30兆円程度の財政支出だ。消費減税(消費増税スキップと財政支出30兆円と効果は同じ)をすれば、2020年度に名目GDPは630兆円程度になるだろう。