この「マイガレ倶楽部」の退会理由調査も面白い。こちらも真っ先に予想されるのは、乗りたいバイクにはあらかた乗ったから月額会員はもうやめるというものだが、それに当たる回答はわずか3%しかなく、34%と最大多数を占めた回答は、バイクを購入したからというものだった。

 つまり、レンタルで乗るうちにバイクが欲しくなって購入に至る人がそれだけ多いということなのだ。「マイガレ倶楽部でいろいろなマシンを試すうちに、お気に入りのバイクができてきて、それで購入に至る方が多いようです。レンタル車両が気に入って、わざわざそのマシンを買われる方もいるくらいです」(花澤氏)

 ここで興味深いのは、最初から購入検討の試乗目的で入会する人が多いわけではないことだ。最初から車種が絞り込めていれば、ライバル車種と乗り比べるために合わせて数回借りれば充分で、わざわざ月額会員になる必要はない。

 レンタルでいろいろなバイクに乗るうちに、ある車種に惚れ込んで購入に至る――。ある意味、これほど賢い買い物のしかたもないかもしれない。クルマやバイクは高い買い物だ。そして人間の感覚はきわめて繊細だ。アクセルへのレスポンスやブレーキのタッチひとつにも、好き嫌いが大きく分かれる。どのマシンが自分の好みに合うのかは、カタログデータではわからない。乗らずに買ってから後悔しても、それこそ後の祭りだ。

 そのように、レンタルは販売促進という観点でも大きな潜在力を秘めている。バイクレンタルは四輪車と比べてはるかに市場規模が狭く、多様な車両の確保にも困難が少なくないが、レンタル819が実施しているように二輪車メーカーの販促もかねてタイアップで車両を提供してもらうという流れがもっと広まってもよさそうだ。

 地方では生活に欠かせない四輪車とは違って、バイクは趣味性の高い乗り物だけに、大型免許はあっても現実に所有できるのは通勤兼用の125ccスクーターがせいぜいというライダーも少なくないかもしれない。けれども、目を転じればレンタルという手がある。大型にはレンタルでたまに乗るという楽しみ方があってもいいし、そんなバイクライフの提案もまた市場拡大につながりうる。

 道楽のオープンカーを夢見る人も多いが、オートバイの解放感はそれをさらに上回るものだ。寒い時期に山道のトンネルに入ればとたんに全身を温もりに包まれるし、海辺の潮のにおいも、雨の降りはじめの砂埃のにおいも、余さず鼻孔にとどいてくる。

 ターマック(舗装路)からグラベル(砂利道)まで、プレイグラウンドは幅広く、腕さえあればマシンのポテンシャルを活かす場所には事欠かない。そうして1日思いきり走って帰宅し、ベッドに潜りこめば、体の芯から潮騒のごとくにエンジンの鼓動が寄せ返ってくる。マシンを操る楽しさと、鉄の馬との一体感。こんな素晴らしい乗り物が世の中にあるということに気づかずに、四輪車だけに乗り続ける人生はあまりにももったいない。

 レンタルなら、たとえば九州や北海道など旅行先で1日だけ乗ることもできる。手ぶらで行けて、まさしくスノボ感覚だ。そうした利用シーンも含めて、オートバイを所有していなくてもその魅力を手軽に味わえるレンタルという業態は、大きな可能性を秘めている。

(待兼音二郎/5時から作家塾(R)