ところで昨年WHO傘下の機関である国際がん研究機関(IARC)が加工肉の発がん性の判断(ハザード特定)を公表したことは大きな話題になった。不安になった方も多いかと思うが、必要以上に心配することはないようだ。日本では既に国立がん研究センターが1995年と98年に大規模な調査を行っているが「加工肉(ハム・ソーセージなど)摂取について、日本人の一般的なレベルなら大腸がんリスクとならない」という結果である。食品には良い面と悪い面の両方があり、健康への影響は量次第。

 加工肉を食べて癌になることを心配するなら今のところわかっている肥満や飲酒といったリスクを減らすほうがいい。 

 吉田の妻への愛は深く、先立たれてからしばらくは仕事を中断するほどだった。そんな彼を救ったのはやはり音楽だった。バッハの『平均律クラヴィーア曲集』を聞いた吉田は「私はこの不条理の世界にも何かの秩序がありうるのではないかという気がしてきた」と音楽評論を再開する。

「不条理の中で生きるとはどういうことか、年とともにますますわからなくなった」と吉田は吐露するが「ただ『生きていればこそ、幸せにもなれたろうに』というトルストイの言葉(『戦争と平和』)に間違いはなかろう」と続ける。「たとえ世界が不条理だったとしても」音楽が鳴り続ける限り、そこに救いはある。

参考文献/『たとえ世界が不条理だったとしても』吉田秀和著