「鰤王」のロゴ入りTシャツで作業中の濱村修二さん。お顔は前編

 薄井漁港から船で沖へ向かうとほどなく、美しい海原に濵村さんのブリの生簀が広がる。取材時は、ちょうど奥さまの弥生さんも、モジャコの餌付けの作業中。家族全員できめ細やかな養殖を行っている。

 基本的なマニュアルはあっても、海も畑と同様で生簀のある位置によって環境は異なる。餌の量や与えるタイミングといった対応は生産者の経験にかかっている。

 けれど濱村さんは「漁協の体制がしっかりしているので、安心して育てることに専念できます」と笑顔で語る。「小学校3年生の息子も、将来は養殖をしたいと言っているんですよ(笑)。息子の世代まで、安心して魚を育てられる環境を目指していきたいと思っています」。

濱村さんの鰤王の生簀は3台、年間1万5000尾を出荷する

「若い人が夢を持てる漁業、生産者の方が元気な漁業を実践できる漁協を目指したい」と中薗さんは語る。

「漁協だけがよくなるということはないですからね。生産者の方が元気な漁協を作りたいと思います」

 生産者と漁協が連帯感をもって一体となって飛躍をつかむ。しかしこれだけで終わらないのが東町漁協だった。

史上最年少副町長(30歳)が命名
『長島大陸』として町おこしスタート

 東町漁協は、加工尾数が過去最高となったことを機に、平成25年、新たに「総合加工場」を建設し、6次産業化を目指した商品開発をスタート。

 鰤王などの養殖魚や、フィレ加工後のアラや中落ちなどの未利用資源、漁船漁業で獲れた低利用魚などを使った惣菜などの商品化にあたったのだ。

 これまで国内では、卸売の大量販売が中心だったが他産地との競合によるその収益減少を補うべく、個人向け市場の販路拡大、消費者向けのブランドづくりを狙った。

 鰤王ブランドの加工品としては、民間企業と連携しながら、鰤王の照り焼き、メンチカツや漬けにした商品が誕生した。さらに、その販路拡大も含めて、全国でも事例のない漁協初の試みをスタートした。

 なんと「会社」を作ってしまったのである。

 株式会社JFA。ファンドを使った総合事業を展開するべく、東町漁協の子会社として、2015年9月に設立された。社長には、代表理事組合長である長元信男さんが就任、そして中薗さんはJFAの取締役でもある。

 資本金の50%は農林漁業の6次化支援ファンドを利用し、残りは漁協、国内外に幅広い販路をもつパートナー企業が出資した。

 JFAでは、総合加工場で作られた商品の販売、輸出、ECサイトの運営、飲食店事業などを展開。また市場への買参権を持ち、加工品や飲食店用に東町漁協薄井港市場の購入にあたる。

「長島大陸市場」では鰤王やアジ、カンパチ、海藻類などの魚介類、加工品を販売。それだけではなく、長島町の野菜やくだもの、焼酎なども取り扱う。いわば「インターネット上の道の駅」を目指しているという。

 また長島町の特産品を使った料理が楽しめるレストラン「長島大陸市場食堂」を運営。薄井漁港そばにあった典型的な昔ながらの“漁港の食堂”を内装、メニューを大幅に見直して、この4月からリニューアルオープン。地域の水産物の市場拡大、雇用創出による地域活性化をはかっている。