国土交通省がリートの規制緩和の検討を始めた。目玉は、リートに実質的な内部留保を認めるという制度変更である。
リートは、利益の90%を配当するなどの一定の要件(導管性要件)を満たすことで実質免税になる。いわばリートと一般企業を大きく分けるこの制度について「白紙ベースであり方を再議論すべき」と馬淵澄夫副大臣が8月中旬に発言。リート業界からはにわかに期待が高まっている。
リーマンショック後、金融機関からの融資借り換えや分配金の支払いにも窮したり、経営破綻するリートが現れたのは記憶に新しい。市場のパニック沈静化を図るため、国交省は経営難のリートの救済策を相次いで打ち出してきた。
今回の制度改正への動きは、この延長線上にあるもの。内部留保として現金があれば、経営難のリートはそれを借入金の返済などに活用でき、融資借り換えに窮する事態を回避できる。健全なリートでも、たとえば保有不動産の売却益を使って、より価値の高い物件を新たに取得するなど、ポートフォリオの収益性を強化できる。
「配当ルールや資金調達など、今のリートは制度にがんじがらめにされており、まったく自由がきかない」(大手リート幹部)という声は業界でも根強い。規制緩和により各リートの経営の安定化を図ろうという国交省のこの動きは一定の評価に値する。
だが、内部留保を無制限に緩和すれば一般の上場不動産会社とリートの区別はなくなり、投資法人として優遇措置を受ける理由がなくなる。緩和にはリート各社の体質強化や市場への信頼回復も期待されるものの、同時にバランス感も求められる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)