では、日本市場における米車のポジションはどうか。共和党の大統領候補に指名されることが確実なトランプ氏の主張とは裏腹に、米フォードは年内に日本市場から撤退することを発表している。フォードは年初に突然日本事業からの撤退を発表し、その際に「日本市場の閉鎖性」を指摘したようだが、その根拠はない。

 日本は乗用車関税がゼロであり、自動車市場では国産ブランドの競争が激しいとはいえ、輸入車も同じ土俵で競っている。2015年の日本市場における輸入車シェア(軽自動車を除く)は約10%である。中国市場の約5%、欧州市場の約4%と比較しても、日本では輸入車が健闘しているのがわかる。ただし、日本の輸入車市場の80%以上が欧州車であり、なかでもドイツ車が圧倒的に強いのが特徴だ。

 米国サイドからは、「日本の自動車市場には非関税障壁や閉鎖性がある」などという批判が常に出てくるが、それも筋違いだ。ブランド力でアピールしてきた東京モーターショーへの出展もここ数年とり止めているなど、日本市場における米国メーカーの増販意欲が足りないせいであり、米車のシェアが4%程度に留まる原因となっている。

 今回フォードが日本事業の撤退を決めたことで、さらに日本から米車が減ることになりそうだ。それにしても、フォード車ファンのユーザーや販売会社が気の毒である。フォードジャパンは、フォード車ユーザーに対してアフターサービスフォローの委託会社を用意するなど「立つ鳥跡を濁さず」の立場を示した。

グローバル競争が激化しても
「競争と協調」のバランスは必要

 こうして見ると、米国における自動車産業は、かつての「自動車は国家なり」という栄光の時代から幾多の変遷を経てきたことがわかる。そんななかでも米ビッグ3が世界をリードしてきたという自負が、トランプ氏の主張の根底に流れる「偉大な米国の復活」という思想と二重写しになるのだろう。GMとフォードはリーマンショックから立ち直り、ここへきて一気に復活している。その底力を見る限り、米自動車市場が、日本市場や欧州市場にとって今後も大きな対立軸であり続けることは確かだろう。

 日米自動車摩擦が起きた頃から、かれこれ40年が経過する。今や自動車産業も、IT企業や人工知能と連携・競合する時代に入ってきた。グローバル化が進む新時代においても、「競争と協調」がキーワードであることに変わりはないはずである。そのことをトランプ氏も意識すべきだ。