Photo by Kazutoshi Sumitomo

『週刊ダイヤモンド』7月9日号の第1特集は、「落語にハマる!」です。落語に魅せられるビジネスマンが急増しています。落語に触れる機会が増加し、その愉しみ方も多様化しているからだ。あなたも落語にハマってみては?

「本音を言えば、『渋谷らくご』は半年くらいで終わっちゃうかなと思っていました」

 こう話すのは、自身もお笑い芸人として活動するサンキュータツオ氏。「渋谷らくご」とは、東京・渋谷のユーロスペースで毎月第2金曜日から5日間開かれる落語会だ。落語初心者向けに定期的に開催される新興の落語会として、徐々に認知度を上げている。

 今でこそ満席の日もあるが、当初は鳴かず飛ばずだった。プロモーションも担っていたタツオ氏は、できるだけ多くの人を集めようとツイッターやニコニコ生放送など使える手は全て駆使して、着実にファン層を拡大させていった。今では高校生や20代のカップルが足しげく通っている。

 今、落語界を取り巻く環境は激変している。新宿末廣亭、池袋演芸場、浅草演芸ホール、鈴本演芸場といった東京の四つの定席(365日、休まず落語の公演をしている寄席)以外にも、「渋谷らくご」のように初心者向けの落語会や、(落語家の最高位である)真打の一歩手前の「二ツ目」専用の寄席、「らくごカフェ」など、落語を聴ける場所が増えているのだ。

 つい先月も、タワーレコード渋谷店地下のイベントスペースで開催された落語イベント、「渋谷タワレコ亭」が話題となった。タワレコ渋谷店といえば音楽好きの若者が集まる場所である。落語会を行うイメージなど皆無だ。

 企画担当のタワーレコードメディア&ライブ事業部の大幡英俊氏は「会場を埋めるのは難しいと思っていた」と、不安を抱えながらの始動だったと振り返る。

 もっとも、成算がないわけでもなかった。ここ数年の間に開催された“フェス”と呼ばれる音楽ライブイベントで、落語をプログラムの一つとして採用するケースが増えてきた。好きな音楽を聴くように好きな落語を聴く、という行為が徐々に、若年層を中心に浸透してきたという実感があった。

 果たして、心配は杞憂に終わった。開催当日までに、230席余りのチケットは予想以上のスピードで完売してしまった。早くも、「第2回の企画を検討したい」と大幡氏は声を弾ませている。

 旧来型の落語会の開催件数も激増している。日本で唯一の演芸専門誌「東京かわら版」によれば、首都圏での月当たりの落語会の開催件数はこの10年で実に2倍に増加した。2015年秋には、ついに1000件の大台を突破、過去最多件数を達成した。