柳家花緑さんは、落語界をリードする若手実力派のひとり。落語の公演で全国各地を飛び回りつつ、テレビや舞台などでも幅広く活躍し人気を博している花緑さんは10人の弟子を持つ師匠でもあります。そんな花緑さんに落語の学び方、そして落語の教え方についてお話を伺いました。 [写真]=橘 蓮二
9歳で落語を始める
落語は江戸時代から現在に至るまで庶民に愛され庶民と共にある伝統芸です。しかし、よく考えてみると、たった1人で座布団1枚敷かれた舞台にちょこんと座り、数十分の物語を身振り手振りを交えて語ることで、観客を魅了し楽しませるというのは、かなり難易度の高い話芸です。
落語家はいったいどのように落語を学んでいるのでしょうか。人気落語家であり、10人の弟子を抱える師匠でもあり、『落語家はなぜ噺を忘れないのか』(角川SSC新書)の著者でもある柳家花緑さんに、落語家の学びについてお話を伺いました。
花緑さんが、同居していた祖父(落語界初の人間国宝、故・五代目柳家小さん)や叔父(六代目柳家小さん)の手ほどきを受け、落語を始めたのは9歳の時のことでした。
「誤解のないようにしたいのですが、落語家は世襲制ではありません。私のように身内に落語家がいて二世で活動しているのは、むしろとても稀な存在なのです」。多くの落語家は、高校、大学卒業以降に、師匠の門を叩き、弟子入りするようです。
落語は本来、師匠の噺を聞いて真似する「口伝」で伝えられてきました。しかし、祖父小さんは非常に多忙だったため、花緑さんは祖父の落語のテープを聞き、それを全てノートに書き起こし、覚えたら祖父に聞いてもらい、アドバイスを受ける、という形で稽古をしたそうです。
「祖父の口調そっくりそのままコピーしていたので、子どもなのに年寄りっぽい話し方になっていて。若さのない子どもでした(笑)」