百貨店苦境の最中に
注目の銀座三越がリニューアルオープン

屋上には芝生広場と農園が誕生!<br />銀座三越リニューアルから占う百貨店業界の今後9月11日にリニューアルオープンした銀座三越
Photo by Toshiaki Usami

 それは1904年に遡ります。日本のデパートメントストアの歴史は、三越日本橋店のオープンとともにスタートしました。

 しかし多くの方がご存知のとおり、今、その百貨店業態が苦境を迎えています。有楽町西武が年内で閉店することを発表したことは有名ですが、それだけに留まりません。松坂屋岡崎店が閉店、松坂屋名古屋駅前店、京都の四条河原町阪急百貨店も先日閉店を迎えました。

 テレビのニュースでも「百貨店29ヵ月連続前年割れ」など暗めの報道ばかりです。一体百貨店はどうなってしまうのでしょうか。

 そうした懸念が高まる状況の中、久しぶりに百貨店業界を賑わせるニュースが飛び込んできました。銀座三越の増床リニューアルオープンです。9月11日のオープン初日から18万人を超える客数を達成、初日売上高は7億円以上だったといいます。

 銀座三越の総投資額420億円、売上目標630億円というこの数字は何を物語るのか。この出店がこれからの百貨店戦略にどの程度意味を持つものなのか。今回は、三越リニューアルの実態、それに呼応した銀座地区の各社の動向から百貨店の今後を占います。

新たなコンセプトは
「マイデパートメントストア」

 オープン前日、私はNHKの経済ニュース番組「Bizスポ・ワイド」の特集、『銀座三越がリニューアルオープン。百貨店の巻き返し戦略について』(参照;ブランディンクナビ)にゲストとして呼ばれ、これからの百貨店のあり方について話をさせていただきました。

 百貨店の存在意義を考えるためには、「なぜ百貨店が苦境に陥ったのか」を整理する必要があります。なぜなら、日本の消費は確かに厳しい状況ですが、すべての日本人が急速に消費支出を抑え、まったくモノを買わなくなったわけではないからです。

「百貨店の売上は落ちていて、ネットは伸びている」。これが現実です。人がモノをまったく買わなくなったわけではなく、“以前ほどは買わなくなった”程度なのです。

 百貨店という「業態」が悪いのでなく、昔ながらの百貨店という「仕組み」が変わっていないことが問題だといえるでしょう。そこにメスを入れようと、各社は新たな戦略を構築し、動き始めました。

 リニューアルオープンした銀座三越、通称「ギンミツ」は、今度のリニューアルで「マイデパートメントストアをめざす」と宣言しています。「私だけの百貨店」という意味です。

 お客様に「私だけの店」と言ってもらえる店とは、どんな店なのか。銀座という世界でも注目される街のランドマークとして、長年商売をしてきた同店がどのような店に生まれ変わるのか。これは他の立地で商売をしている同業者はもちろん、異業種の方からも注目が集まっていました。

 では、銀座三越は一体どんな店に生まれ変わったのでしょうか。