今回で105回目をむかえる本コラムでは、毎週さまざまな業種・業界における、その時々の話題のトピックスを取り上げながら、各産業界の近未来及び将来性について、コンサルティング現場での肌感覚なども踏まえながらお伝えしてきた。
このような、業界を取り巻く環境を捉え、その構造を俯瞰し、そこから将来の動きを予測することは、今や我々のような経営コンサルタントという職業のみに求められる能力ではない。今ほど、社会的にも経済的にも不確実性が高く、先を見据えにくい時代では、あらゆる企業、そこで働く全ての人々にとって、「マクロの視点で全体を俯瞰し将来の方向性を予測する」ことの重要性は、日々高まっているといえる。
構造理解はすべての判断の前提
見誤れば致命的な判断ミスとなる
不確実性の高い現代では、次のような思考が今まで以上に求められる。
企業は常に進化を求められる。少し前の成功モデルはすぐに陳腐化し、他社に模倣され、差別化のメリットは消滅してしまう。進化のオプションの1つとして新規事業開発やM&Aにより事業ドメインを広げることも必要になってくるであろう。そこでは新しい業界や産業に身をおき、その場で新たな事業価値を創出することが求められる。
営業レベルでみても、営業マンは単なる商品やサービスの特徴や優位性を語るのみでは、もはやその存在意義がない。自らが所属する企業が、業界の中でどのようなポジションに位置づけられているか、他社にはない自社独自の強みは何かを理解し、それらを顧客に訴求することで、無形資産としての人や企業の価値を顧客に感じてもらわなければならない。その結果として、信頼やロイヤリティを獲得できるはずだ。
営業マンでなくとも、自らの将来のキャリア形成を考えるとき、自分が勤める企業や所属する業界が将来どうなるか、明るい展望は描けるのか、有望な業界・産業はどこなのか、今の成長は一過性のものなのか、ある程度中長期的に続く成長なのか、こうした視点は今の時代に必要である。これから就職先を決める学生の方々にも同じことが言えるだろう。
誰にとっても、こうした視点は押さえておかなければならない前提といえる。その前提の捉え方に抜け、漏れがあり不十分であった場合、誤った選択をしてしまう可能性もある。
そこで、今回は、我々が業務上、企業分析や業界分析の際に良く利用するフレームワークを取り上げながら、業界や産業の構造把握、現状把握を行ない将来の流れを大まかに予測する手法の一部を皆様にお伝えしたいと思う。