セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文氏が5月に会長兼CEOを退き、名誉顧問に就任した。そんな鈴木氏を直撃、これまでの流通人生、そしてグループの将来について聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之、田島靖久)
──名誉顧問となり、本社から新しいオフィス(ホテルニューオータニ・オフィス棟)に移りました。仕事のペースは変わりましたか。
今のところ、これまでよりも忙しいくらいですよ(笑)。取引先をはじめとする付き合いのある人たちが、あいさつに来たりしているから。朝はだいたい午前8時半に来ているし、夜はお客さんがいなければ早く帰るけれど、生活自体はあまり変わっていませんね。
会社からの報告はある場合とない場合がありますよ。とはいえ、こちらから積極的に言うことはありません。
──新しいオフィスの場所は鈴木さんが決めたのですか。
いや、後藤(克弘副社長)とかが、「この場所はよさそうだからどうですか」と言うので決めました。どこでもよかったのですが、ホテルの方が何かと便利でしょう。
コンビニだって
変化に対応しないと駄目になりますよ
──会長を退き、流通業での人生に一区切りついた形です。振り返ってみていかがですか。
もともとマスコミ関係の仕事がしたくて、(出版物流商社の)トーハンに入社しました。そのうちテレビが登場し、プロダクションを作ってそっちの仕事をしようとスポンサーを探していたとき、イトーヨーカ堂が、「入社すればスポンサーになってもいいと言っている」と友人から言われたんです。
当時のヨーカ堂は5店舗で、誰も知らないスーパーだったんですが転職しました。その後、いつスポンサーになってくれるのかと尋ねたら、「将来の話だ」と言われた。
トーハンを辞めるとき散々反対されたこともあって、「それ見たことか」と言われるのもしゃくに障るので、そのままいることにしました。いたらいたで何かしなくちゃ気が済まない性格なので、改革や新しい仕事に取り組みましたね。
──何かを残さなければという思いがあったのですか。