世界各国の金融機関や通販会社が
FIDOに注目

 だが、セキュリティの問題はどうなのか。FIDO普及のために設立された世界的な非営利団体『FIDO Alliance』から、日本国内での普及活動を任されているDDSの三吉野健滋社長に話を聞いた。

「このシステムの優れた点は、指紋の情報が金融機関や通販サイトなど、企業側には伝わらないことです。もちろん今まで、金融機関のなかには指紋認証に対応している企業も存在しました。しかしこれだと、ユーザーは利用する全ての金融機関、カード会社に自分の指紋を伝えなければなりません。企業もお客様の指紋…究極の個人情報を絶対に漏れないよう保管するリスクを負うことになります」

 しかし、FIDOは事情が異なるという。「指紋の情報は持ち主のスマホの中に保存され、スマホから企業側のサーバーには『本人ですよ』という情報しか伝わりません。だから企業から大量の個人情報が漏れることは、原理上ありえません」

 では、この進化がeコマースにどんな影響を与えるのか。引き続き三吉野氏に話を聞くと、世界各国の金融機関やeコマースサイトがFIDOに注目している理由がよくわかる。

「最大の変化は、FIDOによってeコマースや金融機関の勢力図が塗り替えられる可能性が高いことです。例えばネット通販でほしいものを見つけても、新たなID・パスワードを発行されるのが嫌で、同じ商品を楽天やamazonなど、既にアカウントを持っているサイトで買う、といったことはありませんか?FIDOの利便性が認識され始めれば『FIDOに対応しているからこのサービスを選ぶ』ということが起るはずです」

指紋認証とサーバーとの通信部分を担うデバイス「magatama」。指紋認証の部品は、今や数ドルにまで値下がりしており、普及しやすい環境が整っている

「ちなみに『iPhone』などに搭載されている指紋認証の部品は、いまや数ドルにまで値下がりしていて、今後はノートパソコンなどにも搭載されるようになるはず(筆者注:Microsoftの『Surface』のキーボードのなかには、既に指紋認証対応機種が発売されている)。当社も、指紋認証とサーバーとの通信を担う部品だけを切り出した『magatama』という商品のパイロットプロジェクトを開始しており、既に数多くの企業からお問い合わせをいただいています。普及が始まったら早めに対応しなければ顧客が流出する、という事態にもなりかねません」

 三吉野氏によれば、現在、銀行、証券から通販サイトまで「多数の会員を持つ企業からの問い合わせが相次いでいる」らしく「サーバーをFIDO対応にするだけで新会員を獲得しやすくなる」「ログインの時にパスワードがわからず離脱する顧客が減りコンバージョン率が上がる」と、毎日、仕組みを話しまくっているという。果たして、スマホは水戸黄門の印籠になれるのか!?