近年の医学部人気で、受験の難易度は高まる一方だ。比較的入りやすい医学部でも偏差値60前後と、生半可な勉強では合格できない。医師になると決めたら、できるだけ早く対策を始めるのが賢明だ。週刊朝日ムック『医学部合格「完全」バイブル2017』では、医学部に強い高校を特集。受験競争を勝ち抜くための「医学部強豪校」の選び方を、専門家が分析した。

勉強のスピードと量で公立を突き放す中高一貫

2016年国公立大医学部合格者数トップ50校 1位~12位(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
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2016年国公立大医学部合格者数トップ50校 14位~24位(『医学部合格「完全」バイブル2017』より)
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 2016年の国公立大医学部医学科・前期日程は、募集人員3661人に1万8342人が志願した。15年より志願者数は微減したものの、少子化の影響を加味すれば、医学部人気は高止まりしているとみられる。

 国公立大医学部合格者数上位50校 の全国1位には、9年連続で東海(愛知)が入った。上位9校はいずれも私立の中高一貫校で、上位50校の内訳も私立中高一貫校32校、公立高校14校、国立中高一貫校4校と、中高一貫校が圧倒している。医学部受験は、中学・高校選びから始まっている、といっても過言ではない。

 中高一貫校が医学部に強いのには、理由がある。

 まず、高校受験がないことだ。有名中学を中心に高い合格実績を誇る進学教室「SAPIX小学部」の教育情報センター本部長・広野雅明さんはこう話す。

「中高の6年間を通して切れ目ない学習が可能です。特に私立は学習指導要領の制約がないので、先取り学習で高2までに高校のカリキュラムを終えられる。高3は、医学部受験対策にじっくり取り組めます」

 また、中高一貫校の強さは、いわゆる「ゆとり教育」にも関係する。公立の小・中学校では、教員が作成したプリントを穴埋めするだけで、ノートを取る習慣はほとんどみられなくなり、宿題や予習復習も最低限しか出ない状況が続いているという。

「こういった学習環境で、医学部に受かるような学力を持つ子どもが育つかというと、正直厳しいと思います。中高一貫の進学校は、受験の主要教科にかける授業時間を、一般的な公立の1.5倍以上確保しており、演習量の差は非常に大きいです」