総予測2026Photo by Yoshihisa Wada

百貨店の大丸と松坂屋を運営するJ.フロント リテイリングは、同業他社との同質化競争から抜け出そうと、“外貨”を稼ぐ戦略を打ち出している。またグループ内のパルコやギンザ シックスと連携し、独自色を出す取り組みを続ける。特集『総予測2026』の本稿では、2025年の取り組みの成果と26年の見通しについて、同社を率いる小野圭一社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

堅調な国内富裕層の購買力
インバウンド不安定さが露呈

――中期経営計画の2年目である2025年は、どのような年でしたか。

 率直に言って、難しい年だったと思います。大丸松坂屋百貨店では25年3月、月次売上高が3年7カ月ぶりに対前年マイナスとなりましたが、その大きな要素はインバウンド売上高の落ち込みでした。24年度上期の春から初夏にかけて、為替は1ドル=160円台まで円安が進み、さらに一部のラグジュアリーブランドでは価格改定がありました。その駆け込み需要が日本の百貨店で発生した反動で、対前年のマイナスが大きくなりました。24年のインバウンド売上高が良過ぎたのです。

 24年8月は円高に振れた影響で売上高が落ち込んでいたこともあり、25年8月の月次売上高の対前年比は持ち直して、9月からはプラスになっています。

 国内の富裕層マーケットを対象とした外商事業は安定しており、売上高は堅調に伸びている一方で、インバウンド売上高の不安定さが出た1年となりました。

――インバウンド売上高は、為替や国際情勢などのさまざまな要因によって変動します。今後の動向をどうみていますか。

 長期的な視点に立つと、観光立国を掲げる日本において、インバウンド売上高は成長を続けると思います。波打ちながら、右肩上がりに伸びていくマーケットだと捉えています。

 今後はその売上高の成長よりも、安定させることがミッションになると思っています。安定的な成長に、できるだけ近づけていきたい。もっとも、来店客の目的性が高いパルコにおいては、インバウンドはずっと安定的に対前年増率を続けています。

――インバウンド売上高を変動させる要因の多くは、企業がコントロールできるものではありません。

百貨店各社の25年はインバウンド売上高の増減に翻弄された1年だった。そんな中でJ.フロント リテイリングの小野圭一社長は、“外貨”を稼ごうと社内で音頭を取る。どういう意味なのか。次ページでさらに話を聞いた。