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AI関連が脚光を浴びた2025年相場。アドバンテストやソフトバンクグループなど値がさ株がけん引して日経平均株価は史上初めて5万円を突破した。AIか非AIかで二極化したという声もあるが、冷静に1年間を振り返ると意外にも「投資の王道をひた走っていた一年」と見ることもできる。どういうことか。連載『株式相場の歩き方』の本稿では、見過ごされてきた「意外な事実」と、AI相場は値動きが激しくて……と敬遠する個人投資家が26年相場で注目すべき銘柄群について考える。(株式コメンテーター 岡村友哉)
AI関連がけん引した25年の日本株だが
その裏側にも意外な投資チャンスがあった
「日経平均5万円」というパワーフレーズが強烈だった2025年の株式市場。ザラ場(取引時間中)ベースの史上最高値(5万2636円87銭)を付けたのが11月4日ですが、ここに向けた「日経平均激強」地合いのイメージが鮮烈に残っていますよね。
日本株にはTOPIX(東証株価指数)と日経平均株価(日経平均)という二つの代表的な指数があります。日経平均は東京証券取引所のプライム市場に上場している代表的な225銘柄で構成された指数で、TOPIXは東証プライム市場の銘柄を中心に約1700銘柄で構成されています。
少しややこしいのですが、二つの指数は算出方法が異なります。計算方法については省略しますが、ざっくりと説明すると、日経平均は株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすく、TOPIXは時価総額が大きい銘柄の影響を受けやすいという特徴があります。
前置きが長くなりました。今回はここからが本題です。
日経平均をTOPIXで割った「NT倍率」という指標があります。倍率が上昇しているときは日経平均がTOPIXよりパフォーマンスが良い状態。このNT倍率が、史上最高スコアを付けたのも11月4日でした。
このときのNT倍率は15.77倍でしたが、その2カ月前(9月4日)は13.75倍でした。2カ月でNT倍率は約15%アップしています。これが何を意味しているか分かりますか?
NT倍率が15%アップしたということは、この間の日経平均の上昇率がTOPIXより15%高いということです。つまり、日経平均買い(ロング)とTOPIX売り(ショート)を同額持つ形のペアトレードをすると、2カ月で15%ものリターンがあったということです。
例えば、2カ月間のTOPIXのパフォーマンスが±0%なのに、日経平均は+15%していたと想像してみてください。
日経平均が5万円の場合、15%は7500円です。東証プライム全体を示すTOPIXは全く上がっていないのに、日経平均がわずか2カ月で7500円も上がったら、「どうなっているの?」と思いますよね。
これが実際に起きたのが25年9~10月の日本株市場。その原動力となったのが、アドバンテストやソフトバンクグループといったAI関連の値がさ株でした。
AI関連銘柄は、PBR(株価純資産倍率)が高いグロース株と定義されます。AI相場が印象的だった25年はグロース株の躍動抜きでは説明できない一年でした。
それなのに……、年の瀬も迫った12月19日時点で日本の主要な株価指数の年初来騰落率を集計してみると、意外な事実が判明します。
年初来騰落率(12月19日終値時点)は日経平均が+24.1%で、TOPIXが+21.5%でした。二大指数の比較において日経平均の勝利という意味では順当です(とはいえ、11月4日までの圧倒的な差はかなり縮みました)。
ところが、さらに細かく見ていくと、意外な結果になっているのです。指数には日経平均、TOPIX以外にも市場や規模、銘柄タイプなどで分類された指数があります。
それらの指数を含めて騰落率が高い順に並べた場合、日経平均は3位なのです。では、日経平均の上に位置する1位、2位はグロース系の指数でしょうか?
実は2位はTOPIXバリューの+29.4%、1位はTOPIXスモールバリューの+32.5%……、なのです。
え?今年ってAI銘柄に代表される大型グロース株よりバリュー株の方が良かったの?しかも、スモール、つまり小型株が良かったの?
ものすごい意外感ありませんか?
アドバンテストやソフトバンクGなどAI関連の大型株が躍動した25年ですが、AI関連は値動きが激しく、波に乗れなかった個人投資家も少なくありません。そんな個人投資家に見てほしいのが、上図の「意外な事実」です。次ページで具体的に説明しますが、AI銘柄と対極にある地味な銘柄でも、年初来71%上昇、91%上昇など大きく値上がりした銘柄が少なくないのです。しかも、複雑な銘柄分析による発掘というよりも、丁寧にスクリーニングをしていけば発掘できた銘柄群です。その背景と26年の投資アイデアについても具体的に説明していきます。








