そう。早起きになった分、早寝になった孝博さんは午後10時には布団に入る。元来夜型人間の加寿子さんも付き合って11時には布団に入るが、本当はまだ眠くない。灯りを消して、暗闇でじっとしていると、孝博さんがゴーゴーといびきをかきはじめ、うるさくてますます眠れない。

 結果、ほとんど眠った実感がないまま朝となり、孝博さんに安眠を妨害されて仕方なく起き出し、朝食をとり、パートに出かける。帰宅後耐え切れず、昼寝をすると、さらに夜、寝付けない。ずっと、その繰り返しだ。

「早朝の空気は気持ちいいぞ。君も一緒に散歩しようよ」

 爽やかに笑う孝博さんがうらやましい、そして恨めしい。これまで病気らしい病気はしたことがない加寿子さんだが、最近は疲労が溜まり、血圧が高くなってきた気がする。

 パートが休みの日は、一日中寝ていたいが、孝博さんに起こされる。

(このままじゃ、倒れちゃう。私が朝型人間になればいいのかもしれないけど、私は夜更かしが好きなのよ!)

加齢に伴い体内時計は朝方にシフト
『朝活』を強いる男性の勘違い

 年を取ると、人は自然に早起きになる。

 加齢に伴い、体内時計がじわじわっと朝型にシフトするからだ。

「俺は毎日にハリがあるから早起きなんだ」

 かつては朝が苦手で仕方なかったのに、今では小鳥のさえずりと共に目覚め、読書に散歩、英会話の勉強、ラジオ体操等々、密度の濃い時間が送れる自分が嬉しくて『朝活』を周囲に押し付ける男性経営者や上司がたまにいる。

 だがそれは、単純に年を取っただけ…という自覚は頭の片隅に持っておくべきかもしれない。

 加えて睡眠には、男女差がある。

 ヨーロッパでの調査によると、青年期は女性と比べて男性の方が夜型傾向が強いが、45歳を超える頃から男性の朝型化が目立ち始め、55歳くらいになると男女逆転、男性のほうが朝型になるという。