名の知れた有名企業であっても、息の根を止めるほど威力を持つことがある「大企業病」。しかし、これは中小企業であってもかかりうる病だ。大企業病が起こる原因や具体的症状、治療法を安部修仁・吉野家ホールディングス会長に語ってもらった。(構成/フリージャーナリスト 室谷明津子)

社員が仕事の目的を
考えなくなったら危ない

 歴史や規模を誇っていた大企業が、突然の不祥事や業績低迷に見舞われたとき、よく「大企業病」という言葉が使われます。図体が大きくなりすぎて、時代変化に柔軟に対応できなくなった恐竜。そんなイメージを思い描く人も、いるかもしれません。

社員たちが与えられた仕事を続けるうちに、いつしか「今ある仕事の細かな改善」のみを意識するようになり、「なぜこの仕事をしているのか」という本質的な視点がごっそり抜け落ちる。これが大企業病の典型症状の1つだ(写真はイメージです)

 具体的な症状としては、縦割り組織の中で自分が所属する部門の利益のみを求めるセクショナリズムが蔓延し、経営目標と各部門の仕事がかけ離れていく。“部分最適・全体不適”の状態が徐々に広がり、組織をむしばむのが、「大企業病」です。

 なぜこのような現象が起きるのか。どうすれば予兆があった段階で芽を摘み取れるのかを、今回は考えていきましょう。

 大企業病と名前がついていますが、規模が大きい会社だけにこの「病気」が発生するわけではありません。100人規模の中小企業であっても、この病気にかかることはあります。

 予兆としては、現場が仕事の目的を見失い、ルーティンワークとして「昨日までやってきた仕事を今日もやる」という働き方になり始めたら、危険です。本来であればトップが定めた経営目標に沿って、必要な仕事が各部門に割り振られ、現場に下りていく。それが、現場の人々が与えられた仕事を続けていくうちに、いつの間にか仕事の目的が「今ある仕事の細かい改善」のみになり、なぜその仕事を自分がやっているのかを考えなくなる。

 経営陣からするとすごく劣後の、事業活動の目的からかけ離れた仕事の精度を一生懸命上げて、それが仕事だと思い込む「手段の目的化」が起きるのが、大企業病の症状です。

 これは、引き継ぎの過程で起きることもあります。担当者が交代するときに、役割と機能性を伝えずに作業方法だけを伝承する。または、欠員が出たときにそれまでの業務を精査しないまま、自動的に後任を補充してしまうのです。

 経営計画がたいてい5ヵ年であるように、ほとんどのプロジェクトは3~5年、どんなに長くても10年以上かかるものはありません。時間経過とともに経営の目標が変化するので、当然、現場での仕事の目的やプロセスも変化します。それなのに現場が盲目的に、「これまでやってきたこと」をなぞって繰り返す。そうすると、組織は柔軟性や機動性を欠き、おかしくなっていきます。