今回は、会社員が企業社会で受ける「教育訓練」について考えたい。
多くの職場では、上司や先輩、同僚、ときには外部の研修会社などから、何らかの形で仕事を教わるはずである。それらをまとめて、この記事では「教育訓練」と呼ぶ。
会社員と取材を通じて接していると、彼らがある種の錯覚や誤解をしているのではないかと感じることが多い。一定水準以上の学歴を身につけている人は、入社後に「教育訓練」など受けなくても、ある程度のレベルの仕事ができるはずだと見られているケースが多いのだ。
たとえば、その象徴的な言葉が「あの人は東大を卒業しているのに、あんなこともできない」というものである。こうした捉え方は、本当に実態に即しているだろうか。筆者は、こんな疑問を日頃から感じていることもあり、どこかの企業の職場で問題が起こったという話を聞くと、その職場の「教育訓練」が適正に機能しているかどうかに思いを馳せることが多い。
今回は、最近経験した出来事をきっかけに、「教育訓練」と学歴について改めて考えてみた。読者諸氏はどう感じるだろうか。
医療クリニックと大学病院の
「対応能力の差」は何で決まる?
この記事を書く数日前、筆者は医療クリニックで肺のCTスキャンの検査を受けた。フリーランスになった十数年前から、年に1~2度のペースでこの検査を受けている。いつもは大学病院にするが、今回は仕事が立て込んで時間的な制限もあったため、このクリニックを選んだ。
初めて訪れたところだったが、様々な意味で新鮮だった。まず、電話で検査の予約をする。20代前半と思える女性が出て、やりとりをした。そのやりとりの一部を紹介しよう。
「その日は、予約がもう入っちゃってて……」
「入っちゃってて……というのは、予約を入れることが難しいということですか?」
「いや、予約がもう入っちゃってて……」
こちらの質問に対して、見事なまでに要領を得ない回答が返ってくる。女性の言わんとしていることは何となくわかるのだが、その都度、確認をしないといけない。