ホンダで長らくヒットらしい商品に欠ける中、伊東体制下で大きく軽自動車に事業を振ったことで経「Nシリーズ」が大ヒットとなったのも確かである。この軽自動車Nシリーズを通じて、開発から営業までの事業活動を全面的に見直した。軽自動車事業は、ホンダの開発から生産、営業に至るまでの組織改革も促したのだ。

 八郷体制でホンダらしさの復活始動に向けた今回のNSX日本市場投入は、伊東体制の開発段階からの「置き土産」だ。八郷体制としてこれからいかにホンダらしい商品、お客様の人生を変えるような商品を供給し続けることができるか。まさに従来の「攻めるホンダのトップ」から「バランス型のトップ」に代わった中で「ホンダらしさ」をどう復活させていくのか、八郷ホンダ体制の今後の動向が注目されているのである。

注目されたソフトバンクとの共同開発
「感情エンジン」をモビリティに活用

 一方、最近のホンダの動きで注目されたのが、ソフトバンクとAI(人工知能)分野で手を組んだことである。ホンダは、7月22日にソフトバンクと共同で人工知能技術「感情エンジン」をモビリティに活用するための研究を始めると発表している。

 これは、自動車に人の感情を読み取る「感情エンジン」を搭載しようというもので、ホンダとソフトバンクが共同研究で手を握るというのも注目される。本田技術研究所は、知能化技術の研究開発を行う施設である「HondaイノベーションラボTokyo」を東京・赤坂に開設することにしている。

 ソフトバンクグループの総帥である孫正義社長は3兆3000億円もの巨費を投じて英半導体設計のアームホールディングスを買収するというニュースが話題を呼んだが、孫氏はあらゆるモノがインターネットに繋がるIoTの普及への起爆剤を自動車に考えていると言う。

 このカリスマ経営者は、ホンダの創業者である本田宗一郎氏と若い頃に出会い、薫陶を受けたことがあるそうで、奇しくもここへきてホンダ・ソフトバンクのタッグが成立することになった。

 本田宗一郎氏の「技術は人間のため、独力で技術開発にこだわる」という考えもホンダらしさ、ホンダイズムに繋がっている。ホンダは、自動車のグローバル再編といわれた2000年代初頭の自動車各社間の提携に背を向けて独立を維持してきた。かつて英ローバーとの資本提携で苦い経験をしたこともあり、自主独立がホンダ経営の根幹だった。

 ただ、米GMとは環境技術提携の関係にあり、知能化技術にも提携拡大化との見方も出ていた。ホンダとしては環境と知能での技術提携という面では他企業との連携の可能性も示していた。それだけに今回のソフトバンクとのタッグはIT企業との連携によるホンダらしさを打ち出すという観点からも興味深い。

 ともあれ、ホンダが「普通の会社」になったらホンダではなくなってしまう。最近のマツダやスバルのほうが、よほどかつてのホンダのような独自性を示しているだけに、これからのホンダの奮起を期待したい。