老舗商店や百貨店の町である、東京・日本橋が変わる。10月28日、日本橋室町に再開発ビルが並んで2棟、同時にオープンするのだ。

COREDO室町にオープンしたラーメン店「バシのせたが屋」

 一つは三井不動産が開発する「室町東三井ビルディング」。地上22階建てで、商業施設「COREDO室町」とオフィス階から構成される延べ床面積4万1000平方メートルのビルだ。

 COREDO室町には、鰹節のにんべんの新業態店など、地元の老舗と併せ、日本橋地区には珍しい、1000人を収容する大型ホールや、ラーメン店「バシのせたが屋」、魚介居酒屋「日本橋紀ノ重」など、若年層にアピールする中小型店舗を中心に25店入居する。

 もう一棟は、野村不動産が開発する「日本橋室町野村ビル」。地上21階建て、延床面積4万6400平方メートル。オフィス部分の全フロアには内幸町から移転する新生銀行本店が入居する。 

YUITOのXEX日本橋

 地下1階から4階の商業施設「YUITO」には、北欧の高級服飾雑貨ブランド、ジョージ・ジェンセンが入居。また、ゴルフ練習ブースを備えたバーラウンジ、「XEX日本橋」や、しゃぶしゃぶ店「好の笹」など、ビジネスマンの接待利用を見込んだ大型飲食店舗が入る。

 今回のビル開業は、日本橋室町一帯の1万1900平方メートルを、2014年までに再開発する「日本橋室町東地区開発計画」の第一弾プロジェクトだ。計画は全部で5街区に分かれ、14年までに三井不動産所有ビル3棟を含む4棟のビルと商業施設が建設される。

 日本橋で1000年以上の歴史を持つとされる福徳神社の移設と参道、周辺の鎮守の森の整備も行われる計画だ。

 一連の再開発計画は、本社を日本橋に持つ三井不動産の目玉開発でもある。現在の日本橋は三越日本橋本店や高島屋東京店、老舗店舗の町で来街者も高齢者が多く店舗の営業時間も短い。

 「若年層や外国人観光客来街者を増やしたい。今後開業するビルには、大型のシネマコンプレックスを誘致する計画だ」(飯沼喜章・三井不動産常務)という。「江戸時代に文化・商業の中心地だった日本橋の往事のにぎわいを復活させたい」と岩沙弘道・三井不動産社長も意気込む。将来的には、首都高を地下化し、日本橋の上空に青空を取り戻す構想も持つ。社を挙げた気合プロジェクトだ。

 じつは、このように日本橋に思い入れを持つのは三井不動産だけではない。「野村證券から分社して日本橋一丁目で創業した当社はもともと日本橋の不動産会社。改めて“新参者”として加わり、日本橋に新たな老舗を作る」(宮島青史・野村不動産常務)という野村不動産も同様なのだ。

 日本橋室町野村ビルは、旧三和銀行の新室町ビル建て替えにあたり、周辺用地の追加取得を行うことで開発したもの。「三井不動産が様々な手段で買収を狙い交渉してきたが、思い入れのある地所で頑として拒否した」(野村不動産幹部)といういわくがある。

 日本橋再開発は、個人を含む19人の地権者との共同作業でもある。地元商店会の力も強く、さらに大手ディベロッパーも2社絡む。どのような街づくりを行うかの各論のすり合わせには今後困難も予想される。今回開業する、隣り合う2棟の商業施設のコンセプトも、若年層や女性客を狙うCOREDOと、ビジネスマン需要を見込んだYUITOで微妙に異なる。

 「銀座や丸の内に客を奪われている日本橋を浮上させたい、という思いは一つ」と両社は主張する。今後、それがどのような形で結実するのか。注目が集まる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

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