小池百合子都知事が「カジノ推進」を打ち上げた。NHKとのインタビュー(8月9日)で「東京に魅力をつけるため、IRがあっていいと思っている」と語った。

 IRとは「統合型リゾート」の略称。娯楽施設や劇場・ホテルなど集めた複合施設だが中核はカジノだ。政治家たちは「カジノ」と言いたがらず「アイアール」と言う。一種の隠語である。

 小池氏は自民党衆議院議員のころ「IR推進議員連盟」のメンバーで、カジノ解禁には前向きだった。

 就任早々「推進」を鮮明にしたのは、秋の国会をにらんでのことだろう。安倍政権の懸案であるカジノ推進法案が審議される。世論の動向や公明党との調整に手間取り継続審議になっていた法案が成立すれば、「カジノは東京で」と相乗りの構えだ。ところが、政府と都の足並みは必ずしも揃っていない。巨大利権を差配するのは誰か、という究極の大問題が不透明なのだ。

 国際カジノ資本は1兆円を超える投資を表明して処女地日本の解禁を待っている。カジノの運営主体、施設の建設からゲーム機・ソフトの納入に至るまで多種多様の新事業に企業が群がる。仕切るのは誰か。首都東京を舞台とする「おいしいビジネス」は、東京五輪関連だけではないようだ。

“処女地”日本を狙う
国際カジノ資本と安倍政権の蜜月

 カジノ法案が国会に提出されたのは2013年12月。このころから国際カジノ資本の顔役たちが頻繁に日本を訪れ自治体を回り、候補地を物色している。

 ラスベガスで最大級のカジノを運営するMGMリゾートインターナショナルのジェームス・ミューレンCEOは、「日本でカジノが解禁されれば市場は400億ドルを超え米国・マカオに次ぐ世界で三番目の規模になる」と予想し「少なくとも50億ドルの投資を行う用意がある」と朝日新聞とのインタビューで語った(2014年7月18日)。

 シンガポールでカジノを成功させたマリーナベイ・サンズの社長兼CEOのジョージ・タナシェビッチ氏は、親会社のラスベガス・サンズは「投資については100億ドル程度と、かなりの額を考えている」と日本市場への期待を語った(2016年4月5日、産経新聞)。

 タナシェビッチ氏は東洋経済の取材にも応じ、「候補地は国際空港に近いことが条件」に挙げ「お台場が一番手の候補になっているが限定する必要はない。横浜市には大きな関心をもっていただいている」と、敢えて「横浜」の名を挙げた。実は「お台場」は東京都との間で話がややこしくなっていた。そこで横浜が急浮上した。このあたりの事情は、あとで記述する。