かつての「外国製品ボイコット」は愛国主義者の「英雄的行動」であり、国を愛するがゆえの蛮行には罪はない、すなわち「愛国無罪」とされた。だが、現在は「戦争と革命の時代」ではなく、国家建設を重視する時代であり、革命的時代の論理に基づく過激な行動は「チンピラ」となってしまう。現在、習政権は社会秩序の安定を重視しており、こうした現象は明らかに社会不安を招く恐れがあるため、『人民日報』はそれを戒める記事を発表したのだろう。

本当の「愛国的行為」は
「自分の仕事にしっかり取り組む」こと

「KFCボイコット」事件に対し最も辛口の評論を発表したのは、新聞記者の李暁鵬氏だった。李氏は微信(WeChat)の個人アカウント「鵬看」に「愛国を行うにはまず蠢貨を抑えることが必要だ」との記事を投稿し、KFCの入口で横断幕を持って立っている者は蠢貨(愚か者)であり、法律違反の疑いがあるとストレートに述べた。

 李氏の投稿記事は、「愛国はいろいろな商品をボイコットすることではなく、何よりもまず蠢貨を抑えるようになる必要がある。君が中国で、中国は君だ。君が蠢貨なら、中国は愚か者となるし、君がバカなら、中国は人々に軽視されるだろう。さもなければ、君は愛国の二文字をぶち壊しているのだ」と主張している。さらに、「愛国の大きな旗は、蔡洋(2012年9月28日に西安の反日デモで日本車に乗っていた人に重傷を負わせて懲役10年の判決を受けた青年)のようなチンピラ無産者を守るものになってしまった」と述べた。この記事は微信上に広く拡散した。

 7月18日に、慧超氏がアカウント「思維補丁」に投稿した「日本製品・アメリカ製品・フィリピン製品ボイコットよりも、蠢貨を抑えるほうがもっと重要だ」と題する記事もネット上に広がった。ここでは望ましい「愛国」についてこう述べている。

「もし君が本当にこの国を愛しているのなら、一個人ができる最も好ましい愛国的行為、つまり自分のなすべきことにしっかり取り組むことだ。学生は勉強に励み、職員・労働者は仕事に励み、軍人は訓練に励み、科学研究従事者は一生懸命研究して他国の技術に一日も早く追いつき追い越せるよう努め、公務員は公正廉潔を旨をして人民の仕事と生活がさらに良くなるよう取り組む、これこそが最も好ましい『愛国的行為』である」

 さらに7月下旬、「愚蠢(愚か者)」「蠢貨」という二つの言葉が微信の「友達の輪」の中で広く、そして勢いよく拡散した。これまでの「理をもって堂々とした態度で、強い調子で愛国の情を訴える」という「愛国」はほとんど見られなくなった。

 微博ユーザーの「@湖海散人」は中国人の「愛国的行動」の変化について、「その数は前回の『日本製品ボイコット運動』よりもはるかに少ない。しかも一部のボイコットを叫ぶスローガンは、実は『突っ込みを入れる』くらいのもので、さらに言えば、自分自身で楽しむもの、誰かとからかい合うものになっている」と述べ、「事件そのものが『娯楽化』している」と分析している。

 同氏が指摘した「娯楽化」は、中国人の考え方が変わったことを示している。ここまで紹介したネット民のコメントも、強い調子のものもあったが、それ自体何かを目指しているものではない。ただ「突っ込み」を入れて楽しんでいるレベルで、同調者の団結を目指しているとは思えない。彼らの関心は天下国家よりも、自分の生活に向いており、精神生活を豊かにするための手段として「突っ込み」を楽しんでいるのだろう。ただ、ネット空間で悪質な言論もあり、ユーザーの「公共意識」の向上は今後の課題である。