4月30日、中国・北京で岸田文雄外相が李克強首相、王毅外相らと会談した。国際会議を除いて日本の外相が中国を訪問するのは、2011年以来5年ぶりのこと。一歩前進を期待させる一方で、会談が暗示したのは「楽観は禁物」という脆弱な日中関係だ。
近年、中国で沸き上がる訪日旅行ブームにより「日中の二国間関係も好転している」と感じた市民や企業人も少なくないだろう。日中関係は改善に向かっているかのようだったが、実は中国当局は内心腹を立てていたのである。
それが現れたのは、会談中に中国側が示した「4つの希望と要求」である。そのひとつに「二度と中国脅威論をまき散らさないこと」という強めの文言がある。安倍晋三首相が国際会議の場で中国の海洋進出への批判を繰り返してきたことが、中国の癇(かん)に障ったようだ。
改善ムードくっきりの2015年
今年の春節、埼玉県のある友好団体が主催した賀詞交歓会の席で、中国大使館員が述べた言葉は印象的だった。
「2015年を節目に、日中関係は改善の方向に向かっている。複雑な問題が残されているものの、中国には『問題より解決策の方が多い』ということわざがある」――
会場のムードはそんな前向きなスピーチになごんだ。2012年に尖閣諸島を国有化して以降、数年に及んだ「堅い空気」はすっかり取り払われたかのようだった。
2015年を振り返れば、安倍首相は4月、訪問先のインドネシアで、習近平国家主席と会談した。2014年11月の北京での会談で険しい表情を崩さなかった習氏が一転してにこやかな表情になり、習氏が「中日関係は改善してきた」と述べたことは日本でも話題となった。